フィリピン・マニラ首都圏にある入国管理局のビクータン収容所(2023年撮影、時事通信フォト)
今年5月14日に栃木県上三川町の一軒家で女性が殺害された強盗殺人事件では、実行役の高校生4人(いずれも16歳)がすぐさま逮捕された。のちに日本側の指示役とされる20代夫婦も逮捕されたが、夫婦に強盗を主導したとされる益田和彦容疑者(48)は事件3日後に東南アジアに逃亡。現在、公開手配中だ。5月30日には18歳の高校生が職業安定法違反容疑で逮捕されている。実行役を勧誘するリクルーター役を務めた可能性があるという。
本事件は「匿名・流動型犯罪グループ」いわゆる「トクリュウ」による事件とみられている。犯罪ごとに離合集散を繰り返し、匿名性の高いアプリ等でやりとりすることが特徴だ。このトクリュウによる強盗の存在と恐怖を日本中に知らしめたのは、2022~2023年にかけて各地で発生した「ルフィ」らを指示役とする「広域強盗」であろう。ノンフィクションライター・高橋ユキ氏がレポートする。
「捨て駒の中でも特別」
当時の一連の事件では、SNSでの「闇バイト」を募集する投稿によって集められた実行役らが「ルフィ」を名乗る指示役らとつながり、日本各地で強盗を敢行していた。幹部4人はフィリピンのビクータン収容所でスマホを用い、日本の実行役をリクルート。秘匿性の高いアプリで彼らに強盗を指示し、得た金をフィリピンに送金させていた。
今年5月、「ルフィ」を指示役とする強盗に関わった日本側メンバーの裁判員裁判が開かれていた。そのメンバーは、他の実行役が「捨て駒の中でも特別」と称するほど「ルフィ」との関係の深さが際立っていた。
フィリピンの指示役による広域強盗事件において、「ルフィ」を名乗る指示役と密接に繋がり、実行役の送迎や強奪品の売却など、日本側での後方支援を担っていた大古健太郎被告(37)である。大古被告の裁判員裁判の判決公判が5月28日に東京地裁で開かれ、江口和伸裁判長は求刑通りの懲役23年および罰金50万円を言い渡した。
匿名流動型グループが日本国内で強盗を敢行する際は、末端の実行役が家に押し入り、家人に暴力を振るうなどして脅す。こうした犯罪行為によって実行役が金品を奪ったとしても、指示役がその犯罪収益を得るためには、換金や運搬を担う人材が必要になる。まず時計や貴金属など、金目のものを奪った際はそれらを買取ショップで換金し、合計額を正しく計算したうえで指示役に報告。指示通りに犯罪収益を分け、指定の場所に届ける……そんな地味で負担の大きい作業を実直に、また持ち逃げもせずに逮捕されるまで遂行してきたのが、大古被告だった。
加えて、強盗の実行役らを待ち合わせ場所から現場まで送り届けるだけでなく、その車の手配も行なう。待ち合わせ場所に来るための持ち合わせもない実行役へは「経費」から交通費を送金するという作業も担当していた。宅配業者になりすますための服や段ボール箱、そして凶器や結束バンドなど、実行役が必要とする“道具”も準備していたという。
