再開発では珍しくない地元住民の「分断」
これまで仲良くやってきた住民たちの間にも、「分断」が起こっているのだが、これは“よくある”話だというのは前出・経済記者。
「同じ場所で商売しているからといって、全ての店主の意見がまとまるかなんてことはありえません。地主か賃貸か、建物の築年数、業態、店主の年齢、後継ぎがいるかどうか……立場は人それぞれ。結局、誰もが気にするのは“自分がいかに得するか”ということ。今のような不動産価格の上昇局面で、業者から目の前に札束を積まれたら心が揺らぐのは無理もないでしょう。
たとえ自分の店が再開発計画から外れたとしても、目の前にピカピカの高層ビルが完成したら、いまと同じように商売が上手くいくとは限りません。狭い小道に面する店は、建築基準法の関係で建て替えなどが難しいことが多く、店舗や建物は補修しながら使っていくしかない。いずれは立ち退かざるを得ない運命です。各店の事情は様々なので利害が一致する方が珍しい。“賛成派”と“反対派”で真っ二つになるのは、ある意味、普通のことです」
再開発によって、街の“顔”がガラリと変わることも珍しくない。
「たとえば武蔵小杉はかつて、工場や研究所、社宅、シングル向けのアパートが立ち並ぶ庶民的な街でしたが、工場の跡地にタワマンが次々と建設され、高収入のパワーカップルやニューファミリーが多く集まる人気の街へと生まれ変わりました。豊洲や勝どきなども激変しましたし、立石は現在進行系で街が大きく変わりつつある最中です。その過程で街が分断されてしまうのは、都会で生活する人の宿命かもしれません」(前同)
再開発によって街が生まれ変わるのか、それとも失われるものの大きさが問われるのか。その行方は、地域に暮らす人々の選択にも委ねられている。