株価11万円超えから一気に5万円台になったキオクシア・ホールディングスの週足チャート(TradingViewより)
「決算発表に向けてジワジワと上がっていく」の願望
もっとも前回の500万円の勝ちがあるため、キオクシア株が2万円台まで下がらない限りは、トータルでマイナスにはならない。しかし、彼女としては「せっかく勝ったお金を失うのが悔しい」と言う。
ちなみにストップ安をつけたのは海の日の3連休前の金曜日。株式取引ができない日数が3日もあって、「気が気じゃなかった」と言います。ドギマギしながら週末を過ごし、「トランプさん、さっさと停戦してよ!」などと頭の中はキオクシアと社会情勢のことばかり。週明けの22日に株価が6万円台までリバウンドすると、今度は「金曜日の午後買っておけばよかった~! 悔しい~!」となる。
しかし、すぐ冷静になり、「株ってそんなもんだよね。過去の自分の行動をどうこう言っても仕方がない」と、何とか平静を保とうとする。しかしながら、翌22日も上昇を続けるキオクシアの株価が気になり、その都度「金曜日とは言わないまでも火曜日に買っておけばよかった!」とこれまた悔しがる。もう、喜怒哀楽のジェットコースター状態です。
Aさんは、まずは含み損が解消される7万7000円までの回復を期待しつつ、「その後は決算発表に向けてジワジワと上がっていくんじゃないかな」と“勝手な希望”を口にします。そんな中でポロっと漏らしたのが、「この恐ろしい株はさっさと手放したい」という一言でした。
今の彼女は、キオクシアの業績にはまったく興味がなく、ただ日々の株価の値動きを追っているだけ。こうなるともう「企業に出資してその成長を応援する」という株式投資の本来の目的はどこへやら。最近のAさんを見て、株というのは、一攫千金を夢見ながら、それでも損は出したくないという“欲望のゲーム”だということを、しみじみと感じた次第であります。
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【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。
