中国「Kimi K3」の成功ポイントは蒸留とは別のところにある(Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。中国企業が開発するAIの実力と成功に至ったポイント、そこに対する米国の危機感とは──。
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ベッセント財務長官の発言の背景にある危機感
米国のスコット・ベッセント財務長官は7月21日、Fox Businessの経済・金融ニュース番組「Mornings with Maria」において、「中国AI企業が米国のLLMを教師モデルとして訓練を行う“蒸留”という手法を通じて、米国の技術、知的所有権を盗用し自社のシステムを構築したかどうか、調査を行う」と発言した。「我々には制裁を行う権限がある」とも語っている。中国の有力AI企業をエンティティリスト(輸出規制の対象となる企業リスト)に掲載し、米国企業に対して中国製のオープンウエイト型AIモデル(訓練済みのパラメーターを公開、誰もがダウンロードして利用できるモデル)の使用を禁止するなどの制裁を視野にいれているようだ。
中国AI開発企業「月之暗面」(ムーンショットAI)は7月16日、最新モデル「Kimi K3」を公開したが、その性能はAnthropicの「Claude Fable 5」やOpenAIの「GPT-5.6 Sol」といった米国最先端モデルとほぼ同レベルであるにもかかわらず、その利用価格は格安である。ベッセント財務長官の発言の背景には、オープンウエイトで公開する中国の高性能かつ廉価のAIがAnthropic、OpenAIなど米国大手AI企業の収益機会、投資回収を大きく妨げるとの危機感があるのだろう。
ベッセント財務長官は「蒸留」を問題視するが、たとえば、イーロン・マスク氏は2026年4月、法廷において「xAIではOpenAIの技術を用いて自身のAIモデルを訓練している。一般論だが、あらゆるAI企業がその他のAI企業に対して蒸留を行うことができる」と発言している。「相手方の許可を得ることなく蒸留を行うことは業界内での公然の秘密だ」とほのめかしている(Forbes(AUSTRALIA)、5/4)。
