中国CXO業界の現在地は(凱莱英医薬の天津の開発センター。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。AI革命の進展で注目を集める、中国CXO業界の現在地についてレポートする。
AI利用でウェット試験を通過する治験薬の急増が見込まれる
世界最大クラスのバイオテクノロジー関連カンファレンス「BIO International Convention 2026」が6月22日~25日の日程で、米国サンディエゴにおいて開催された。専門分野からビジネス、投資といった分野まで18のテーマについて150あまりの小会に分かれ、専門家による講演が行われた。同時に開催された見本市では、1600社を超える企業が出展し、最新の製品、サービスを紹介、7万件を超える商談が行われたようだ。
ビジネス面では多くの中国企業に人気が集中、AIとデジタルヘルス、Biomanufacturing(バイオものづくり)、細胞・遺伝子治療・ゲノム編集といった分野において、医薬品開発製造受託企業(CXO)の高い競争力が大きな話題となった。
具体的に企業名を挙げておくと凱莱英医薬(06821:香港、002821:深センA株)、泰格医薬(300347:深セン創業板)、博騰股フェン(300363:深セン創業板)、益諾思股フェン(688710:上海科創板)、薬明康徳(02359:香港、603259:上海A株)、金斯瑞生物科技(01548:香港)、康龍化成(300759:深セン創業板)、薬明生物技術(02269:香港)などである。
CXOはAI革命によって今後爆発的に拡大するとみられるセクターであり、長期投資の対象として多くの投資家の関心を集めつつあるセクターでもある。
新薬の研究開発について従来、一般論として“10年の開発期間と10億ドルの資金”が必要だと言われてきた。一定の条件に当たりを付け、その近辺を“絨毯爆撃的なスクリーニング”を行うといった手法を用いてきたことが、こうした非効率を生む最大の要因となっていた。
薬品の効果はその分子構造とターゲット部位との相互作用によって生まれるが、AIが登場したことによって、候補となる薬品の分子構造がより正確に推測できるようになった。ターゲットの識別、候補となる薬品のスクリーニング、分子設計、ADMET(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)予測(安全性評価)、さらには合成の自動化まで医薬開発過程全体をAIは決定的に改善することができるようになったのである。
具体的なその効果を示すと、インシリコ・メディシン(03696:香港メインボード)のAI創薬プラットフォーム(標的捜索・分子設計・臨床試験予想などを統合したシステム)を使えば、従来4~5年かかった開発期間を12~18カ月に短縮できるという(新華財経上海、4/3)。
ただ、これはいわゆるドライ試験と呼ばれる部分である。ドライ試験を通過した開発候補化合物(治験薬)はウェット試験と呼ばれる臨床試験に合格して初めて薬品となるのだが、これに合格する確率は10%にも満たない。
AI利用でウェット試験を通過する治験薬の急増によってCXOの重要性が増す。だから、効率の高い中国CXOへの関心が高まっているのである。
