他業種に応用できるSaaS型アプリ
筆者は、以上の内容を聞いて、「駅スイート」が鉄道以外の業種にも使えると感じた。これはDXによる業務効率化の一例であり、インフラを支える現場に応用できる可能性があるからだ。
実際に日立製作所は、「駅スイート」に関する2026年7月1日付プレスリリースで「将来的には鉄道業界にとどまらず、電力、航空、公共分野など他業種への展開も視野に入れ、現場業務全体の高度化と持続的な運営を支えるサービスの実現をめざします」と記した。
また、日立製作所は、同プレスリリースで「駅スイートは、データドリブンなモビリティソリューションを提供し、交通インフラとサービスの最適化を実現するHMAX Mobilityを構成するソリューションの一つとして展開します」と記した。ここでいう「HMAX」は、同社におけるAIを活用したソリューション(解決策)の総称で、鉄道への導入から始まり、エネルギーや産業に展開している。「HMAX Mobility」は、交通に特化した「HMAX」だ。
そこで日立製作所に聞くと、「駅スイート」の根底にあるのは「現場業務のデジタル化」「情報共有・コミュニケーション支援」「作業管理」「知識・ノウハウの活用」という考え方であり、鉄道業界に限らず他の現場業務にも応用できると考えているとの回答を得た。同社は、まずは鉄道業界で実績を積み重ね、将来的には他分野にも展開し、現場業務全体の高度化や効率化への貢献をめざしている。
現在日本では、多くの業種で人手不足という社会課題が顕在化しており、インフラの維持がむずかしくなっている。このため、今回紹介したような鉄道を起点とするDXが進み、社会の持続可能性が高まることを期待したい。
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術解説者。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。