ナショナルチェーンの限界を超えようとするスシロー
ランキングで最も重きを置いたのが「インフレ対応力(40点満点)」だ。客数変化率(既存店客数の伸び)を25点満点、客単価変化率(客単価の伸び)を15点満点で採点。値上げや商品構成の変化で客単価を上げ、かつ客数を伸ばしたチェーンを擁する企業が上位となる。
「成長力(30点満点)」は利益と売上高の伸び、「稼ぐ力(同)」は、最新期の営業利益率を点数化した。こちらは企業全体の経営指標のため、前述の通り重要度が増す海外での収益力なども反映される。この3つの総合スコアの高い順に並べた。
100点満点中79点で1位となったのが、「スシロー」などを展開するFOOD&LIFE COMPANIESだ。同社はいずれかの指標が突出しているわけではないが、「稼ぐ力」である営業利益率の8.40%で2位となり、「インフレ対応力(客数・客単価)」で3位、「成長力」で4位と、まさに総合力でトップとなった。前出・坂口氏が言う。
「スシローは300円台(現在は200円台)の『黒皿』と、100円台の『黄皿』、その中間の『赤皿』と3つの価格帯を設定し、数年かけて着実に浸透させてきたことで客単価も客数も上げてきました。経営陣の戦略が功を奏した格好です」
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前出・米川氏も「業界に先駆ける仕掛けがすごい」と評価する。
「鮮度を保つために、ハマチや真鯛などをサクで仕入れて店舗で切り分けることで先行したのをはじめ、1000円を超えるセット商品を定着させ、単価の高いフェア商品を打ち出して儲けを出すなど、ナショナルチェーンの限界を自ら超えようとする開拓者精神がある」
そうしたスタンスが消費者にも定着しているのが強みだ。
「ネタへのこだわりから『くら寿司』と『はま寿司』を加えた御三家のなかでも原価率が高いとされ、ファンの間では“味のスシロー”というイメージが浸透していると言えるでしょう」(米川氏)
すかいらーくHDで加速するM&A
続く2位のサイゼリヤは、客単価の伸びは相対的に低いが、客数変化率が14.18%で「インフレ対応力」でトップ、売上高3年CAGR(年平均成長率)が21.18%で「成長力」でもトップだ。
同社は国内外に複数の拠点を自前で持ち、素材開発から原料の調達、加工、配送まで自社で一貫して行なう垂直統合型のビジネスモデルが特徴。ミラノ風ドリア(税込み300円)、ペペロンチーノ(同)、ハンバーグステーキ(同400円)など、他のファミレスと比べても圧倒的な低価格での商品提供を可能にしている。
「中国など海外も主戦場で、前期(2025年8月期)決算では売上高、利益ともに過去最高を記録。値上げによる収益向上にも期待です」(坂口氏)
3位は「ガスト」「バーミヤン」などを展開するすかいらーくホールディングス。売上高に対する利益の伸びが11.70%で2位など「成長力」が目を引く。配膳ロボットやタッチパネル式注文端末の導入で人件費を抑制しつつ、九州で人気の「資さんうどん」、炭火焼干物定食の「しんぱち食堂」などのM&Aを進め、グループを拡大している。また、来年4月の食料品の消費減税を見据え、テイクアウトや宅配に特化した「ゴーストレストラン」の取り組みも進めるなど抜かりがない。
4位のゼンショーホールディングスは、「すき家」をはじめ、「はま寿司」「ココス」「なか卯」などのブランドを展開。「グループが多様なので、巨大な調達力や物流網が武器」(坂口氏)とされ、「インフレ対応力」の2位をはじめ、安定した強みを発揮する。
5位は九州地盤のファミリーレストランを展開するジョイフル。売上高に対する利益の伸びでトップが目を引く。純利益は前期(2026年6月期)の38.9%増に続き、今期(2027年6月期)も38.4%増と大幅な増益を見込む。
「すかいらーくとジョイフルの利益改善はコロナ禍からの回復過程の面もあるが、安さが正義の時代から、値上げを納得させることが正義の時代に大きく変化したのはたしか。吉野家も牛丼はそこまで値上げしないが、期間限定のステーキや鰻など商品を多角化。松屋もローストビーフなど単価を上げる商品で利益を伸ばしています」(坂口氏)
安さで客を奪い合う時代から、景色は一変した。
※週刊ポスト2026年9月25日・10月2日号
