筆者が働く店で提供しているホットサンド
残されたホットサンドの無惨な姿
私は現在、唐津焼でコーヒーや酒が飲めるカフェ兼バーのような店で週1回働いています。焼き物好きな外国人客も多くやってきます。この人たちは好奇心旺盛で、メニューについて熱心に聞いてくる。アメリカ人のカップルは鯨ジャーキーに興味津々で、食べたら「ウマい!」と言う。日本全国各地を前回は30か所訪問し、今回で2回目だというポーランド人女性は、「ざる豆腐」を食べて「こんなにおいしい豆腐は初めて!」と大感激してくれた。
ただ、みんながみんな好反応を見せてくれるわけではない。ホットサンドを頼んだスペイン人カップルがいました。すると不思議な食べ方をします。元々、パンの内側全域にバター・マヨネーズ・からしを塗っており、千切りレタスも敷いています。ホットサンドメーカーで挟むとパンの耳部分で接合され、それを四等分します。このカップルは、耳部分を持ち、メイン具材がない部分を引きちぎって皿に乗せる。皿の上には、パンの残骸とそこかしこに千切りレタスが飛び散る状態に……。ホットサンドってカリっとした耳部分がおいしいですし、調味料とレタスはあるのでその部分も十分つまみになるんですけどね。
ピザの場合、耳の部分を残すのが当たり前、という習慣がアメリカやイタリアにはあります。その感覚だったのかもしれませんが、8ヶ月働いてここまであからさまに残されたことは初めてだったので驚きました。
英語メニューを用意すると「二重価格だ!」と炎上
飲食店における外国人客の不満の上位には「お通し・つきだし」があると言います。頼んでもいないものがいきなり出てきて、それに300~500円ほどを支払う。店の側が「これはテーブルチャージのようなものだ」「すぐに食べられるつまみを用意した」と言っても納得できるものではない。なぜならお通しなんて自分の国にはないから。
翻って海外での日本人を見ても、アメリカではチップをケチったりするし、ステーキ店では、卓上のステーキソース以外に醤油を所望したりもする。これも日本での食習慣を当地で実践しているということで、従業員は困惑することでしょう。
となれば、飲食店の側も予約段階で好みを聞いたり、外国人が苦手な傾向のある品を除外した英語メニューを提供することなどが求められるでしょう。しかし、そういった対応をすれば安泰、というわけでもない。
7月に韓国人男性YouTuberが友人の中国人女性と京都の和食店に行った動画を配信した件です。外国人用メニューを渡されたのですが、値段が高いと文句ばかり言う。そして日本語メニューを女性が求めると「見て、日本人向けには安いものがあるよ」と言い、あたかも“差別的な店”のように扱った。この件が韓国のニュース番組でも報じられ、「二重価格で外国人差別をしている!」と視聴者が反応し、店は営業が困難になるぐらいいやがらせを受けました。
同店の店長に話を聞いたところ「外国人のお客様に人気の品・理解しやすい品だけを集めて英語メニューにしております。もちろん要望されたら日本語メニューも出しますよ。価格はどなた様も同じで、二重価格ではありません」と困惑していました。
このように、配慮をしたにもかかわらず「差別だ!」となる可能性もあるわけで、かくも文化の異なる人々に食を提供するのは難しいことなのです。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『それってホントに「勝ち組」ですか? 現代格差の読み解き方』(鹿砦社)。
