ひとりで買い物に行く“訓練”も大切(イメージ)
長寿社会の今、人生の明暗は現役時代ではなく「老後」にこそ分かれる。だが、老後生活の天国と地獄を分ける境界線は、実に見えづらい所に潜んでいる。今そこにある落とし穴をすべて可視化していく。
ひとりで下着も買えない
老後の生活は、「配偶者のいない未来」に対する備えも欠かせない。生活を配偶者任せにしていた男やもめを訪れる悲哀を、セカンドライフアドバイザーの小谷みどり氏が語る。
「配偶者を亡くしてからスーパーで自分の下着が売られている場所を初めて知る男性が実際にいます。食事をすべて配偶者に頼っていたためひとりになった時、何を食べたいのか自分で決められず、食事がままならず途方に暮れた男性もいます」
こうした悲惨な事例は世の男性にとって決して他人事ではない。
「料理や洗濯、掃除などをすべて妻に任せていると、夫がひとりになった途端にそれらを自分で担うか、お金を払って補うかを迫られます。こうした危機を避けるには、夫婦が元気なうちから夫が下着や一食分の食事を自分で選んでみるなどして、買い物や家事の経験値を高めておく必要があります」(小谷氏)
退職後は夫婦で過ごす時間が増え、「これからは何でもふたりで一緒に」と考えがちだ。だが本当に大切なのは「ひとりでやってみる」ことだと小谷氏は強調する。
「夫が妻の買い物についていく際も、夫に必要なものは夫自身が選ばないと訓練になりません。また夫が妻についていき交友関係にまで関与するのは望ましくなく、夫婦それぞれが自分の友人に会い、ひとりで出かけられる行き先を作っておくことが肝心です。そうした備えがないと、配偶者と死別したのち、行くべき場所を失って孤立する恐れがあります」
老後生活の明暗を分ける落とし穴31【暮らし・生活・住まいの盲点】
住まいについては、老後の不安からバリアフリーなど大規模改修を考えたくなるが、拙速な判断は控えたい。秋津医院院長の秋津嘉男医師が語る。
「体のどこが不自由になり、介護が必要になるかは元気なうちに決められません。何百万円もかけて住宅用エレベーターを設置したのに足が不自由になって1階だけで生活するようになり、費用が無駄になったという事例が多くあります」
60代の自宅改修は躓きのもととなる段差を直す、転倒予防の手すりをつけるなど差し迫る危険に対処するだけで十分だ。
「現金を残しておけば実際に体が不自由になった時に改修などの対処ができます。まずは目の前の危険を減らしつつ、先の選択肢を残すことが求められます」(秋津医師)

