ビデオ通話の相手は本当に社長なのか?(写真:イメージマート)
社長になりすまして経営層や従業員にメールを送り、最終的には不正送金をさせる「ニセ社長詐欺」が2025年末頃から急増している。前編記事では、詐欺の入口から巨額の現金振込に至るまでの典型的な手口などについて、ITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。後編では、生成AIがもたらす今後のニセ社長詐欺の“進化”について解説してもらった。【ニセ社長詐欺の実態と進化・前後編の後編】
生成AIによって詐欺もボーダレスに
2025年12月は生成AIにとっても印象的な1か月で、Googleが高性能で低価格なGemini3 Flashをリリース。追い上げられたOpenAIは新モデルGPT-5.2などを前倒しでリリースした。中国でもDeepSeek V3.2が発表され、アリババやテンセントも高性能なAIを発表している。生成AIは急速な進化を遂げているわけだが、高橋さんは「AIによって効率良く低コストで詐欺が働けるようになったことから、ニセ社長詐欺が増えています」と言う。
「ネット上には、社長や企業に関する情報が多数見つかります。AIによりなりすましメールの作成が容易となり、得た情報に合わせてその人らしい文章にすることもできます。安くて速く、簡単にできることで、悪用する人にも便利になってしまいました」(高橋さん、「」内以下同)
2025年の調査によれば、「業務や日常生活において生成AIサービスを一つでも使ったことがあるか」という問いに対し、何らかの生成AIサービスを「使っている(過去に使ったことがある)」と回答した割合は58.8%だった(総務省「令和8年版情報通信白書」調べ)。同じ調査でドイツとアメリカは75.6%、中国は93.6%もの人が生成AIサービスの利用経験があった。SNSの自動翻訳などで便利な思いをした人も多いだろうが、詐欺の世界もボーダレスになってしまった。
「生成AIを使えば、言語の壁も容易に越えられるようになりました。これまでは、日本語が不自然だからという理由で詐欺メールは見抜きやすかった。しかし、すでに難しいレベルのなめらかな日本語メールを作れます。それを日本時間の平日の昼間、その会社の営業時間内に送信するという細かいところまで偽装します」
