美容整形には様々なトラブルも(『ダウンタイム』にエキストラで出演した桜井野の花さん)
別人のような自分になれたら――そんな願いを託す美容整形外科の舞台裏を描いた配信ドラマ『ダウンタイム』が反響を呼ぶなか、現実の美容整形の現場を取材するとドラマ以上の光と影が色濃く映し出されていた。ライターの河合桃子氏がレポートする。【全文】
ドラマの「SNS運用部隊」はリアルな現状
Netflixのオリジナルドラマ『ダウンタイム』が話題だ。ドラマでは、大金に物を言わせる美容クリニックの経営術や生々しい医療事故の様子など、目を疑うような物語が展開される。
主人公の松岡茉優が演じる天才外科医は借金返済のため美容外科医に転身するが、現実の美容医療はどうなっているのか。
美容整形専門の『城本クリニック』の総院長・小川英朗氏によれば、こうした転科はよくあることだという。
「私自身、脳神経外科を経て美容外科医になりました。医学部在学中は美容外科医に興味はありましたが、2008年の卒業当時はまだ出身大学に形成外科がなく、外の大学に出ることに不安もあり、その当時最もやりたかった脳神経外科に進み、頭頸部の解剖学の知識や外科の技術を身につけました。
数年後に美容外科に転科したのは、保険診療が医師の犠牲のもとに成り立っていることへの強い不満が生まれたことや、美容外科に挑戦したいという思いが復活し、一歩踏み出したからです。手術に対する向き合い方、患者様への対応、学術活動などは当時の保険診療時の経験が役に立っており、本当に脳神経外科の出身医局には感謝しています」
近年は、初期臨床研修を終えた後、他の診療科で専門的な経験を積まずに美容医療に進む「直美(ちょくび)」の医師の増加も注目されている。『ビアンカクリニック』の宮本亜希子医師はその理由を、「医療業界の構造が原因」と指摘する。
「保険診療の現場では、残業が100時間近くなることもあり、50代のベテランでも月10日以上の当直で家族との時間が取れない医師もいます。一方、美容医療では当直がなく週休2日で、基本的に自由診療なので年収2500万円を超える人もいます。強い志がない限り『美容がいい』となる医師もいるでしょう。私自身は保険だけでは足りない部分の治療を補うために美容整形外科で膣医療を行なっています」
ドラマでは、クリニックには「SNS運用部隊」が存在し、美容外科医たちがタレント並みにSNSに出演し、集客に励む様子も描かれた。小川医師は「美容整形とSNSの親和性は高いのでリアルな現状」と言う。
また、ドラマでは美容外科医がド派手なパーティーを開き、シワ改善に効果的な「ボトックス」が打ち放題のパーティーの様子が描かれた。
「日本ではボトックスパーティーのようなものは聞いたことありませんが、なかには女性客に『ボトックスやヒアルロン酸を打ってあげる』などという誘い文句で自宅に連れ込む男性美容外科医の噂は聞いたことがあります」(小川医師)
