アンソロピックの上場目論見書から見える驚異的な成長と巨額投資の実態とは(写真:時事通信フォト)
AI開発の米アンソロピックが新規株式公開(IPO)に向けた目論見書を公表した。調達額は最大1000億ドル(約15兆7000億円)に達し、史上最大のIPOとなる可能性がある。2026年4~6月期の売上高は前年同期比1368%増と急成長する一方、上期の純損失は807億ドルに達した。さらにAIインフラ関連の契約規模は集計方法によって130兆円にも上るという。目論見書から見えてきたアンソロピックの収益構造と巨額投資の実態を、個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
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AIの計算資源を「借金」から「株式市場」で賄う時代へ
「200社以上あるネオクラウドは、グッピーのように大量死と統合を迎える」――。米スペースXのイーロン・マスクCEOは10月25日、X(旧ツイッター)にこう投稿した。同社がエヌビディア製GPUの購入資金として400億ドル(約6兆3000億円)の資金調達をまとめたと明かした。
調達できた理由は、投資適格の信用格付けと、衛星通信スターリンクやロケット打ち上げというAI以外の安定収入があるからだという。裏を返せば、AIデータセンター以外に収入源を持たない新興のGPUクラウド事業者(ネオクラウド)には、もう債券市場は開いていない、というのがマスク氏の主張だ。
その翌26日、AI開発の米アンソロピックが新規株式公開(IPO)に向けた目論見書(S-1)を公表した。
最大1000億ドル調達、史上最大のIPOか
報道によれば、アンソロピックは早ければ11月16日の週にも上場する見通しだ。発行株数と価格レンジは未定だが、米メディアは調達額が最大1000億ドル(約15兆7000億円)、評価額は1.5兆~2兆ドルに達する可能性を伝えている。6月に上場したスペースX(調達額約857億ドル、評価額約1.77兆ドル)を上回れば史上最大のIPOとなり、AIモデル開発の専業大手として米国初の上場でもある。5月の資金調達時の評価額は9650億ドルだったから、半年足らずで倍の値付けを狙う計算だ。
2026年1~6月期の売上高は163億ドル、4~6月期は前年同期比1368%増。既存顧客からの売上が1年前の何倍になったかを示すネット・レベニュー・リテンションは約900%で、売上高の10%を超える顧客は一社もない。一方、同期間の純損失は807億ドルに達する。ただし報道によれば、その大半は現金の流出を伴わない会計上の費用とされる。2025年通期の純損失は420億ドル(前年は18億ドル)である。本業を見ると、4~6月期の営業利益は約9億7000万ドルの黒字に転じている。さらに同社は投資家向け説明で、7~9月期の売上高が前四半期比約45%増の168億ドルとなり、調整後ベースで黒字、フリーキャッシュフローもプラスに転じたと伝えた。
