大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

30歳を越えた人間を鍛え直すには恐怖か金を与えるしかない

 だが、それは当たり前のことであり、私も2004年に上梓した『50代からの選択』(集英社文庫)で、「平均年齢50歳時代」に突入した日本においては、50歳までにサラリーマン生活の棚卸しをして、転職・起業など何をしても食べていける準備をするよう提唱している。

 ただし、それは個々人がしっかり自分の人生設計をして主体的に取り組めばよいだけの話で、今さら政府が「人生100年時代」という大仰なスローガンを掲げて企業の人材採用に口を出したり、中高年や高齢者の世話を焼いたりする必要は全くない。

 そもそも、40年以上にわたって企業のコンサルティングをやってきた私の経験から言えば、30歳を越えた人間を鍛え直す方法は二つしかない。すなわち、厳しく成果を問うて恐怖のどん底に突き落とすか、金銭的にケタ違いのインセンティブを与えるか、である。それ以外に人は変えようがないのである。

 また、高齢者や子育てを終えた世代の多くは、それなりに個人金融資産を持っているので、学び直したり、転身したりしたければ自力でやればよい。“有識者”なる者を集め、税金をかけて60歳以降の過ごし方を議論してみても始まらない。

※週刊ポスト2017年10月27日号

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