田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の国家発展戦略 行き過ぎた自由経済排し社会主義強化の方針

 そのためには、“五位一体(経済、政治、文化、社会、生態文明の一体的な建設)”、“四つの全面(全面的な小康社会の建設、改革の深化、法による統治、共産党による厳格な統治)”が必要である。中国の特色ある社会主義法治国家を建設する。戦争に勝利することができ、優良な人格の人民軍隊を作り、世界一流の軍隊に育て上げる。新型の国際関係、人類運命共同体の構築を推し進める。中国の特色ある社会主義の最も本質的な特徴は中国共産党が指導することである。

 具体的な計画については、2020年から今世紀中頃までを2段階に分ける。第一段階は、2020年から2035年までの間で、全面的な小康社会を完成させるといった基礎の上に、社会主義現代化を基本的に実現させる。第二段階は、2035年から今世紀中ごろにかけての期間であり、基本的な現代化の実現を基礎として、富強民主文明、和諧美麗といった社会主義現代化強国を形成する。

 こうして改めて国家戦略を整理してみると、トウ小平が行った“先に豊かになれる人から豊かになる”といった成長重視から、“全人民が幸福になる”ことを追求するといった公平、公正重視に国家建設の重心が移っている。中国は、行き過ぎた自由経済を排し、共産党の指導力を強化し、社会主義を強化することで発展を目指す方針である。

 こうした発展戦略は、トランプ政権によるアメリカ第一主義と似た部分も多い。政府はアメリカ国民のために働くべきである。インフラ投資を拡大したり、減税を実施したり、時には海外の企業との競争において自国企業に有利な政策を打ち出したりする。トランプ大統領と習近平国家主席は案外、気が合うのかもしれない。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサル ティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。

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