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年金「繰り上げ繰り下げ」論争の死角 「節税」の観点から考える

遅くもらうほど「節税」につながるという視点も

「公的年金の『繰り上げ受給』と『繰り下げ受給』について、“どちらを選ぶべきか”という議論をよく見かけますが、そこで抜け落ちているのが“年金は遅くもらうほうが『節税』になる”という視点です」

 こう語るのは元国税調査官でベストセラー『やってはいけない老後対策』著者の大村大次郎氏だ。65歳受給開始が基本の公的年金は、60歳まで繰り上げると額が30%減り、逆に70歳まで繰り下げると42%増額になる。

「その数字を前提に『額は減るけれど、健康なうちにもらえる繰り上げも選択肢』『60歳まで繰り上げても、77歳までに亡くなる場合は得』といった話がなされ、繰り上げ受給を選ぶ人が1割以上います。その一方、繰り下げを選ぶ人は全体の2%に過ぎません。しかし、実際は60歳まで繰り上げた場合の年金の減り具合は30%では済まない可能性が高いのです」(大村氏)

 その理由が「公的年金等控除」の存在だ。65歳未満と65歳以上では控除に大きな差が出る。

「例えば、年金額が180万円の場合、65歳以上なら120万円の公的年金等控除を受けられ、その他の控除もあるのでほとんど税金はかかりません。ところが、同じ年金額でも65歳未満だと公的年金等控除は70万円まで減り、所得税と住民税が年間で10万円ほど引かれることになってしまいます」(同前)

 繰り上げ受給による減額だけでなく、控除の縮小によって「手取り額」はさらに減ってしまうことがあるのだ。

「税金の面まで含めて考えると、繰り上げ受給はなるべく避けたほうがよいという結論になってくるはずなのです」(同前)

※週刊ポスト2018年6月22日号

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