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「税金納めるために年金受給」のブラックジョーク

年金収入から税金を取られるという理不尽

 政府は年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を奨励している。65歳からの年金受給を70歳からにすれば42%の割り増し年金をもらえるが、その一方で税金負担は年33万円も増え、実際の手取りは26%(年間約50万円)しか増えないという試算もある。

 そもそも公的年金は国民の老後の「生活保障」の性格を持つ。「生活保障」から税金を取るのは理にかなっていない。

 だが、政府は人生100年時代に世代人口が増え、年金という安定収入を持つ高齢者を“税金のなる木”と考えている。そこで割り増しの甘い餌で年金繰り下げを奨励しながら、受給額が増えたシニアには「あなたは高所得者です」と税を課し、それでも余った分は相続税で持っていく。年金繰り下げは、いわば「高齢者を太らせて食う仕組み」だと気づかされる。

 さらに2019年10月には消費税率10%への引き上げが控えている。これも所得税や住民税を搾り取るには限度がある年金生活者まで徴税の網を広げる目的が露骨に透けて見える。

 日本人の健康寿命は現在、男性72歳、女性74歳だ。人生100年時代とはいえ、リタイア後の65歳から75歳までの健康寿命の約10年間は、人生で最も自由度が高いライフスタイルを選び、満喫することができる年代といっていい。

 その貴重な時間を政府の「年金割り増し」のエサに食いついて年金を我慢すれば、生活の糧を稼ぐために健康寿命を消耗した挙げ句、その後は「税金を納めるために年金を受給する」というブラックジョークになりかねないのだ。

※週刊ポスト2018年8月17・24日号

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