田代尚機のチャイナ・リサーチ

苦境のアップル iPhone販売不振が関連企業にも波及

スマホ市場全体のパイが小さくなる中で競争激化

 2018年7-9月期におけるアップルの地域別売上構成を順に示すと、アメリカが44%、ヨーロッパが24%、グレーターチャイナ(中国、香港、台湾、シンガポール)が18%、日本が8%、その他アジア太平洋が5%となっている。この中で伸び率が最も高いのが日本で34%増、次はその他アジア太平洋、以下アメリカ、ヨーロッパと続き、グレーターチャイナは最も低く、16%増である。世界最大のスマホ市場を有する中国での売上伸び悩みが痛手となっている。

 2018年7-9月期における世界のスマホ出荷台数(IDC調べ)をみると、前年同期比で6%減(3億5520万台)となっており、業界全体が厳しい状況だ。シェアトップはサムスン電子で20.3%だが、販売台数は前年同期と比べると13.4%減少している。第2位は華為でシェアは14.6%、販売台数は32.9%増加している。第3位がアップルでシェアは13.2%、販売台数は0.5%増に留まっている。第4位は小米でシェアは9.7%だが、販売台数は21.2%増加している。全体のパイが小さくなる中で、競争が激しくなっている。

 また、別の材料であるが、6日の日経新聞ではiPhone XRについて、台湾の鴻海精密工業と和碩聯合科技に、増産を中止するよう要請したと報じている。

 アップルの収益構造を分析すると、音楽配信などのサービス部門の売上構成は16%で、前年同期と比べ17%増加している。これらは利益率の高い部門であり、収益の安定化に貢献している。また、アップルウォッチなどのその他製品は全体の7%の売上構成だが、31%増加している。その半面、売上高の12%を占めるMacは3%増、7%を占めるiPadは15%減で、業績面での貢献度がマイナスとなっている部門もある。

 現状では売上高の59%を占めるiPhone販売の良し悪しが依然として業績にストレートに現れる状況であり、今後の売れ行き次第では株価調整が長引く可能性もありそうだ。それに伴い、世界各国の関連企業にも多大な影響を与えかねない点が懸念される。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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