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日銀の「家計診断」で見えてくる「マイナス金利」導入の本当の意味

これまで続けてきた「量的緩和」の限界

そうしたなか、日銀は「マイナス金利」という新たな一手を打ち出しました。その背景にあるのは、日銀がこれまで続けてきた「量的緩和」の限界です。直近の新規国債発行額は34兆円規模で、銀行が保有する国債は日銀が買い取っているため、どんどん目減りしている。にもかかわらず、日銀は年間80兆円ペースで国債を買い入れており、量的にやがて限界を迎えるのは明らかです。

また「物価上昇率2%」を目標としている以上、2%のインフレを達成した時点で量的緩和を終了しなければならないという時間的な限界もあります。そのような限界が見えてきたからこそ、日銀は本来なら動かしようのなかった超低金利をマイナスに踏み込ませて、金利の上げ下げによる金融政策を再び打ち出したわけです。

ただ、その中身をよく見ていくと、市場が受けたほどのインパクトはない気がします。

日銀の当座預金を大きく3種類に分けると、①準備預金として定められた部分の金利はそもそも0%。②それを超えてこれまで積み上がってきた超過準備預金部分は民間金融機関に当座預金の積み増しを促すため、0.1%の金利が特例で適用されましたが、それは今回、温存されます。そして、③新規で当座預金に積み上がる部分にマイナス金利が適用されます。

②は現在200兆円近くあり、259兆円ほどある当座預金残高のほとんどを占めます。つまり、当初は当座預金のほとんどがマイナス金利とならないのです。そう考えると、今回のマイナス金利ですぐに金融機関が苦しくなるわけではありません。ただ、マイナス金利がさらに下がって長期化すれば、私たちの生活にも様々な影響が出てくるでしょう。

マイナス金利の副作用実質的な負担増にも

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おそらく今後、市場からはさらなる金融緩和を求める声が再び高まるはずです。そうなった時に黒田総裁が「必要なら、まだまだ下げる」というように、マイナス金利を下げていけば、さまざまな〝副作用〟が予想されます。

すでに指摘されているように、銀行の収益が圧迫されるだけでなく、マイナス金利で債券運用ができなくなることで、証券会社が決済用に使っているMRF(マネー・リザーブ・ファンド)やMMF(マネー・マネジメント・ファンド)などの公社債投信が機能不全に陥るかもしれません。そのほか、生命保険会社が運用難に見舞われる可能性も考えられます。

【注:後に日銀は、MRFに関して、マイナス金利の適応外とすることを決めた】

今回のマイナス金利は、あくまで金融機関が日銀に預ける当座預金の金利に適用されるだけで、私たちの預金までマイナス金利になるわけではありません。しかし、このままマイナス金利を突き進めれば、やがて私たちの銀行口座管理料など銀行取引に関する手数料が引き上げられたり、生命保険の保険料が値上げされたりすることで、実質的な負担を強いられることになるかもしれないのです。

ましてマイナス金利で日銀が得る利益は最終的に国庫に納付されますから、形を変えた増税につながる恐れもある。いずれにしろ、日銀に残された手段は限界が近づき、日銀頼みだけでは景気回復も覚束ない。そうである以上、私たちも手立てを考えておく必要があります。たとえば株式投資ではこれまでよりも銘柄選別が重要になりますし、いったんポジションを減らして、次の「大きな買い場」を待つという選択肢もあるでしょう。お金を「守る」ことに軸足を移す時期は迫っています。

※マネーポスト2016年春号

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