田代尚機のチャイナ・リサーチ

米中貿易戦争は“プロレス”だ トランプ大統領が描く“ベストシナリオ”は?

追加関税措置を完全撤廃するのタイミングは?

 2月21日から24日にかけてワシントンで開かれていた米中閣僚級貿易協議で十分な進展があったとして、トランプ大統領は24日、3月2日から行われる予定になっていた追加関税措置の引き上げを見送る意向を示した。同時に、習近平国家主席との首脳会談を開くつもりだとも発言しており、3月下旬に実施する方向で調整している。

 日本のマスコミは、対中強硬派の意見が中国側と依然として折り合わないことを強調しているが、全権を持っているのはトランプ大統領である。そのトランプ大統領は、株式相場や経済、金融に関する発言は多いが、対中強硬派の中国脅威論のようなイデオロギーを重視した発言は極めて少ない。

 トランプ大統領は21日、ツイッターを通じて、「米国には今進んでいる技術を排除するのではなく、競争に打ち勝ってもらいたい」と発言している。5G分野の技術開発競争で、ファーウェイ(華為技術)がトップ集団の先頭に立つ中での発言である。さらに、対中強硬派がファーウェイについて、違法に技術を盗んでいると疑いをかけ、アメリカのイランに対する制裁禁止措置に違反したとして孟晩舟副会長を拘束している中での発言である。

 トランプ大統領にとってベストシナリオは何だろうか? 3月中旬に開かれる米中首脳会談を通じて中国からさらに大きな(大きく見える)譲歩を引き出し、米国民にアピールする一方で、アメリカのグローバル企業、金融機関などが喜ぶだろう追加関税措置の引き上げ停止を正式に宣言し、株価の更なる上昇を引き出すことではなかろうか。

 ただし、米中貿易戦争はその後も続ける。最終決着となる追加関税措置の完全撤廃は大統領選挙の行われる2020年11月までの間の最も重要な時期となる。そのほか、景気減速がより鮮明となれば、劇的な金融緩和を開始する。様々なイベントを仕掛けることで、景気悪化を食い止め、株価の上昇トレンドを維持する……。

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