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僕の死に方 金子哲雄さんが妻に遺した2つの「遺品」の意味

 葬儀費用は、死後に口座が凍結されることを見越して、自分の口座から稚子さんの口座へ前もって移していた。

 遺品の処分も積極的に行い、「ぼくがやれることは全部やった。後はよろしく」と言い残して去った金子さんに、稚子さんは心から感謝する一方で、「無理をして生前整理をする必要はありません」と語る。

「夫が荷物を整理しないまま亡くなったあと、後片づけをしながら、“これもあの人らしいな”と温かな気持ちになることもあります。遺品整理は大切な人と死別した悲しみを癒す『グリーフワーク』という遺族の心の整理にも通じるのです。生前に自分で捨てられないものは、遺される人に託したっていいんですよ」(稚子さん)

 金子さんが、「遺品」として遺したものはたった2つ。1つは、金子さんが生前に手掛けることがかなわなかった「自著の校正作業」だ。金子さんは生前、「自分の死後に出版してほしい」と語りながら書籍(『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』)の準備をしていた。元編集者の稚子さんが引き継いだ。

「作業中は、何度も夫の死を追体験して、本当につらかった。ですが、それも『グリーフワーク』となって前へ進むことができたんです。私は金子が亡くなる半年前から仕事をしていませんでしたので、これがなかったら社会復帰できなかったかもしれない」(稚子さん)

 そしてもう1つは、パソコンに接続する2台のハードディスク。その中には、スーパーのポップやお店の看板など金子さんが撮影した写真が大量に保存されていた。

「最初は『なんだこれ?』と思いました。あとになって、これは彼の“日記”なのだと気づきました。自分の見たものを通して、生きた証を共有してほしかったのでしょう。“これだけは遺してほしい”と言った彼の思いがわかりました」(稚子さん)

 本当に大切なものは、決して整理できない。これもまた、金子さんの生き方が示してくれた大切な教えだ。

※女性セブン2019年3月28日・4月4日号

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