キャリア

労働組合が守るのは「労働者の権利」ではなく「正社員の既得権」

 なぜそんな重要なことが報道されていないかというと、その理由はものすごく単純で、「リベラル」を自称する新聞社や出版社などでも非正規雇用は当たり前で、「同一労働同一賃金」の原則などまったく守られていないからです。テレビ局の制作現場にいたってはさらに悲惨で、同じテレビ番組をつくっているように見えても、局の正社員と下請けの待遇は主人と奴隷ほど異なりますから、「働き方改革」のまともな報道などできるはずはありません。

 こうした「リベラルの欺瞞」の象徴が、つい最近まで連合が主張していた「同一価値労働同一賃金」です。

 安倍晋三首相が2018年の施政方針演説で「同一労働同一賃金を実現し、非正規という言葉をこの国から一掃する」と宣言してから「働き方改革」は一気に進み、裁判所でも非正規の原告の主張を認める画期的な判決が相次いでいます。

「同じ仕事をすれば、身分や性別、人種などのちがいにかかわらず同じ賃金が支払われる」というのはリベラルな社会の大前提ですが、「リベラル」を自称する労働組合はこれまで同一労働同一賃金に頑強に反対し、「日本には日本人に合った働き方がある(外国のことなど関係ない)」として「同一価値労働同一賃金」を唱えてきました。排外主義(ネトウヨ)と見まがうようなこの奇怪な論理では、「正社員と非正規は同じ仕事をしていても労働の「価値」が異なるから、待遇がちがうのは当然だ」というのです。

 これは要するに、正社員と非正規は「身分」がちがい、人間としての「価値」がちがうということでしょう。ところが(一部の)労働経済学者を含むリベラルな知識人はこのグロテスクな論理を批判しないばかりか、保守派とともに「日本的雇用を守れ」と大合唱し、非正規への身分差別を容認してきました。

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