バブル経済の崩壊後、1990年代半ばから10年間ほどの間、大規模な就職難が社会問題となった。この間に就職活動をした「就職氷河期世代」は、人口の多い第2次ベビーブーム世代(団塊ジュニア)とも重なっており、多くの就活生が数少ない内定の椅子を奪い合うという苛烈な競争を強いられた。1996年に就職活動をしたネットニュース編集者の中川淳一郎氏も、そんな世代のひとりだ。中川氏が当時の就活事情を振り返りながら、氷河期世代特有の心理を読み解く。
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5月下旬、とある地方都市の新しい私立大学で講義をしてきたのですが、学生と色々喋ったら驚きました。4年生は軒並み内定を取っていて、こんな感じの発言をしているのです。
「今内定を持っている会社に行く可能性は75%。あと1社の結果を待ってから決めたいです」
「できれば東京勤務になりたい。それ以外だったら大阪か名古屋。他になったらドン引き」
「周りもみんなもう内定は持っている。持っていない人は珍しいかな」
最近の就職活動は「売り手市場」になっているとは聞いていましたが、ここまで皆さん内定を獲得できるまでに新卒の採用が進んでいるのは実にめでたい状況です。今や企業は早期退職制度をチラつかせ、ダブついた定年間近世代やバブル世代をさっさと放逐し、若い人々を採りたいと考えているのでしょう。
となると、私のような氷河期世代からすれば「なぜ、アノ時は採ってもらえなかったの?」とも思うのです。そこそこの大学に行っていれば1部上場企業の内定を容易にもらえたという、バブル期の先輩就活生たちの逸話も、よく聞き及んでいました。だからこそ、氷河期世代は予想外の苦戦に戸惑いました。特に女子学生は悲惨です。何しろ、応募すらできないのですから。
当時はリクルート他、数社から男子学生と上位大学の女子学生の元には勝手に分厚い冊子が送られてきていました。これは会社紹介の冊子で、ハガキもついています。このハガキに必要事項を書いて送れば会社案内が送られてきて、書類提出やセミナー参加ができるようになるのです。