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恐るべき消費税ムダ遣いの歴史 ガラガラの温泉施設まで作っていた

 6兆円は政治家と役人、自治体の“つかみ金”となった。必要のない農道、林道、遊歩道などの農業土木事業だけでは使い切れず、農村地帯では何億円もかけて温泉を掘削し、全国20か所以上で公営の温泉ランド建設ブームが起きた。

 自民党OBの谷津義男・元農水相が振り返る。

「自民党は票が欲しかったから、農協の要求、農家のいうことを聞いて金目が先にありきだった。6兆100億円の予算を取ったとき、あまりに巨額だったから、これはまずいぞ、何に使うんだと党内で大議論になったんだが、大丈夫だろうとジャンジャン使っちゃった。

 使い途を市町村に任せたら、農家の人が体を休めることができるとか理屈をつけて温泉まで掘った。これをいうと怒られるかもわからんが、ウルグアイラウンド対策費はほとんど役に立たなかったんだよ」

 栃木県の那須塩原温泉街のさらに奥、車で20分ほど山を登った自然公園「箱の森プレイパーク」にある日帰り温泉「遊湯センター」もそのひとつだ。入り口に「農林漁業特別対策事業」の看板がある。

 お盆期間中に取材で訪ねると、広い公園には親子連れが1組、温泉の利用客はいなかった。受付で話を聞いた。

「いい温泉なんですがいつもガラガラです。利用者は多い時期で月に50~80人くらい。地元の農家の人が農作業を終えた後に浴びに来るなんて聞いたことがありません。ここは山奥であまり知られていないし、地元の人は那須塩原温泉街に行きます」

 総務省が集計している国と地方自治体の公共投資を合わせた「行政投資額」の実績値をみると、日本が米国に公約した期間にぴったり630兆円使われていた。

 これではいくら消費税率を上げても税収を社会保障に回せない。借金が膨れあがるはずである。

※週刊ポスト2019年9月6日号

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