田代尚機のチャイナ・リサーチ

不完全で不公平で歪 中国の不動産市場が抱える構造的問題

中国の不動産市場はどうなる?

中国の不動産市場はどうなる?

中国の不動産価格の上昇が止まらない。5月18日に発表された4月の不動産価格統計(70大中都市)によれば、新築商品住宅では、65都市で前月と比べ価格が上昇した。ちなみに、前月も、62都市で上昇している。

地域別にみると、合肥では前月と比べ5.7%、厦門では5.2%上昇した。そのほか、恵州、上海、杭州で3%を超えており、北京、広州、深センなどの大都市でも2%を超えている。

不動産価格の上昇が目立ち始めた昨年4月と比べてみると、深センが62.4%、上海が28.0%、北京が18.3%、広州が17.4%上昇している。10%以上上昇している都市は、全部で9都市ある。

なぜ上昇したのだろうか? 中国経済の2015年の成長目標は7%前後であったが、年初から成長率が低かった。結果的に成長率(実質GDP)は、第1四半期から順に7.0%、7.0%、6.9%、6.8%となったが、早くから目標達成が危ぶまれた。

中国経済の成長は投資に依存しており、その投資は不動産によるところが大きい。2015年の全国固定資産投資に占める不動産開発の割合は17.4%で製造業の32.7%には及ばないが、水利、環境、公共施設の10.1%を大きく上回っており、不動産開発は投資の主要エンジンの一つである。

その主要エンジンが減速傾向を示し始めたのである。国務院は成長目標達成のため、不動産コントロール政策を緩めることにした。

2015年3月、5月、6月、8月、10月には利下げが行われた。住宅ローン金利は段階的に下がり続けた。秋口以降、一部の地方は住宅購入制限の緩和や撤退を行っており、国務院の地方政府に対する監督管理が緩和された。同時に、頭金比率の引き下げや、銀行の融資姿勢の積極化などもあり、不動産価格は上向き始めたのである。

ただし、不動産需要には地域差が大きい。人口流入が多い大都市では不動産に対する実需が大きい。さらに、資金力のある消費者も多く、投機需要も強い。大都市圏での価格上昇が目立つのは、潜在需要の強さから、ちょっとした緩和でも需要が大きく刺激されてしまう。

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