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年金改正 妻の働き方とライフスタイルで変わる受給パターン

「夫婦が老人ホームと自宅に別れて暮らす」→夫だけ繰り下げ

 サラリーマンの夫と専業主婦(3号)の夫婦の標準的な年金額は約22万円。それに対して介護付き有料老人ホームの平均的な入居費用は月に18万~22万円程度とされる。

「夫婦の年金を合わせても1人分しかない。自分か妻のどちらかがホームに入ることになれば、残された方は生活できなくなる」

 誰もが直面する可能性がある深刻な問題だ。年を取ってからの年金額をできるだけ増やしたい──その場合、夫婦とも働くことを前提に夫だけ75歳繰り下げを選ぶ(別掲図のFさん夫婦)。

 夫婦で75歳まで働き、2人で10万円ずつ稼ぐ。それに妻の国民年金(約6万円)を合わせると月収は26万円程になる。夫の年金受給を我慢してやりくりすれば、75歳からの夫の年金は約29.4万円にアップし、夫婦の年金額は約35.4万円だ。

 この金額であれば、どちらかがホームに入居したとき、その費用を払いながら、自宅での生活費もまかなえる。入居一時金を支払って毎月の費用が安いホームを探せば、2人で入居することも可能だろう。

 図ではわかりやすくするために同じ年の夫婦の年金額を試算したが、繰り下げを選ぶ場合、夫婦の「年齢差」や妻の働き方も選択のポイントになる。

「妻が年上」の夫婦は、夫が稼いでいるうちに妻が年金をもらえる。このケースなら、「妻だけ繰り下げ」で家計に無理なく将来の夫婦の年金額を増やすことができる。逆に「妻が年下」の夫婦で、夫が65歳になった時に妻がフルタイムで稼いでいるなら、「夫だけ繰り下げ」を選ぶ。

 この場合、夫が厚生年金を繰り下げると、加給年金がもらえなくなるので注意が必要だ。そこで夫が「基礎年金だけ繰り下げ」を選べば、加給年金ももらえる。

 今回の年金大改正では「繰り上げ」と「繰り下げ」の選択の幅がこれだけ広がるのである。

※週刊ポスト2019年12月13日号

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