田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本のGo Toの混乱を横目に… 中国が打ち出す独自の消費刺激策

 家電家具内装に関しては、政府の決める条件に適合する地区において、環境にやさしいスマート家電の購入や、環境保全に配慮して作られた家具の購入、内装工事に補助金を出すといった政策である。

 レストランに関しては、外出する消費者が構造的に減ってしまった以上、新しい業態を開発するしかない。創造的で新しいオンライン、オフラインの経営モデルの事業展開が進むよう支援する。飲食は集客がもっとも重要なポイントだ。様々な形でレストランを紹介する仕組みができるように支援する。

 業種を特定した支援のほかに、県域・郷鎮(県級市の末端自治区)に焦点を当て、消費を活性化させる政策が出ている。村に至る流通拠点の建設を強化し、農村部の生活、消費習慣にあったショッピングモールの建設を支援する。価格の安いものがたくさん売られることになるが、どうしても偽物の販売、詐欺まがいの商売をする者が出てくる。行政はこうした販売、違法商売について厳しく取り締まる方針だ。

 次に、旅行業界に対する支援策について。中国各地には多くの名所旧跡がある。そうしたところに対して、電子地図、音声案内といったサービスを充実させ、アクセスに必要な道路や、トイレの評価をしっかり行い、顧客へのアピール力を高める。デジタル化して閲覧できるようにしたり、クラウドを使った新しいビジネスを展開したり、“インターネット+旅行・民宿”の発展の規範を示す。更に、審査・認可・監督・管理を改善して安全に旅行が楽しめるよう監視システムを強化したり、オンラインでの訴え・苦情処理システムを強化し、詐欺行為・悪徳商法などを撲滅する。

 日本では新型コロナが再び感染拡大する中で、中央政府がGo Toトラベル、Go Toイートなどのキャンペーン政策を打ち出したかと思うと、それを一部地域に限定する方針に変わるなど、混乱している。都道府県はそれによって右往左往している。

 タイミングが悪い上に、“一律”に“お金を出す(だけ)”という発想が、混乱を生む要因となっているのではないか。消費を引き上げることはとても難しい。収入(補助金による補填)に働きかけるぐらいしか方法がないだろうということは分かるものの、それだけでは固く凍りついた消費マインドを溶かすのは難しい。公平性ばかりを気にしていたら何もできない。中国のやり方の中から、日本でも効果的な施策があれば、ぜひとも活用してほしいと思う。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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