真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

“お祭り騒ぎ”で株価上昇を演出、「ロビンフッダー」とは何者か?

NYダウは一時史上初の3万ドルを突破(写真はニューヨーク証券取引所/時事通信フォト)

 人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第7回は、日米ともに沸く「株高」とその先行きについて分析する。

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 NYダウが史上初の3万ドルを突破し、日経平均株価も29年ぶりに2万6000円を超えるなど、日米の株式市場は高値更新に沸いている。

 最大の要因は、新型コロナウイルスのワクチン開発への期待の高まりだ。米ファイザーに続き、米モデルナ、英アストラゼネカでも開発中のワクチンの有効性が相次いで確認され、感染拡大が収束に向かうことで経済が正常化するのではないか、という期待が高まり、株式市場に資金が流入しているのだ。

 これこそ、行動経済学でいう「バンドワゴン効果」にほかならない。バンドワゴンとは、パレードの先頭を行く楽隊車のこと。昔よく見られたチンドン屋が商店街などを練り歩く光景をイメージしてもらうと分かりやすい。賑やかな雰囲気につられて思わずついて行ってしまうのと同じで、あまり関心のなかった人も人気になっているからつい飛びついてしまう、そんな心の働きをバンドワゴン効果という。

 今回のケースでいうと、ワクチン開発というバンド(楽隊)が「新型コロナに有効」という大きな音を鳴らして、それに個人投資家が群がっている格好だ。その中心的存在が、「ロビンフッダー」と呼ばれる米国の個人投資家である。

 もともとは、スマホで取引でき、手数料も無料の米ネット証券「ロビンフッド」を利用する個人投資家を指す言葉だが、彼らを中心としたネットトレーダーが、コロナ対策として政府から配られた現金給付や失業給付を元手に投資を始め、米国の株価に大きな影響を与えるプレイヤーとなっている。日本でも10万円の特別定額給付金や持続化給付金などを元手に投資を始める「給付金トレーダー」が急増しているが、その米国版はかなりの存在感を示しているようだ。

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