真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

“お祭り騒ぎ”で株価上昇を演出、「ロビンフッダー」とは何者か?

 彼らは今年夏ごろにかけて、巣ごもり消費で業績拡大中の「GAFAM」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)などを中心とした巨大IT企業株を買い漁った。その後、株価があまりに高くなったことに加え、投資資金の元手となる給付金も減ったため、その動きも一服したが、「ワクチン開発」というバンドが登場したことで、今度はこれまで売り込まれていた割安株を一気に買いに走った。業績が大きく落ち込む「ボーイング」などの航空関連銘柄に加え、クルーズ船を運航する「カーニバル」株にまで買いが殺到。コロナ禍で最も売り込まれた株にまでマネーが押し寄せ、いずれも11月には50%以上もの上昇を見せるなどまさに“カーニバル”と化している状況だ。

 そして、バンドに群がる個人投資家の動きは、もはやファンドなどを運営する機関投資家も無視できない状況になっている。過熱感が高いと分かりつつも、そうした値動きに遅れを取るまいと追随して買わざるを得なくなった機関投資家の買いも相まって、個人投資家主導の「株高」が続いているのだ。

現在の株高は実体とはかけ離れていないか?

 この「株高」の底流にあるのが、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとした各国中央銀行の大規模な金融緩和だ。コロナ禍で打撃を受けた経済を下支えしようと、各中央銀行が市場に資金を大量に流入させたことで市場に安心感が広がり、その安心感は大統領選でのバイデン氏の勝利ももたらした。加えて、バイデン新政権ではイエレン・前FRB議長が財務長官に就任する予定となっており、トランプ政権では見られなかった米政府とFRBの連携も期待される。ワクチン開発のニュースに加え、そうしたプラス材料が目白押しである以上、株高は当面続くと見る市場関係者は多い。

 しかし、現在の株高は、実体とはかけ離れた危うい動きにも映る。バンドワゴン効果はいつまでも続くわけではない。年内にもワクチン接種が開始されるとの見立てもあるが、実際にワクチンが行き渡り、コロナが収束に向かうまでには時間がかかるだろう。それなりに効果が出てくるのは、早くても来年春先から半ばにかけてといった予測もある。また、世界経済が正常化して、クルーズ船や航空需要が高まるのもまだまだ先の話だ。

 あるいは、新型コロナの感染源となった中国はいち早くコロナを抑え込み、景気回復に舵を切ったと言われるが、気がかりな“兆候”もある。独BMWとの合弁会社を持つ中国自動車メーカーの華晨汽車集団をはじめ、中国の名門・精華大学発の半導体ベンチャー清華紫光集団などの有力国有企業が相次いでデフォルト(債務不履行)に陥っているのだ。世界経済にとって中国経済の変調は現在の株価上昇をストップさせる気がかりな材料となり得るだろう。

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