大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

コロナ禍で加速する「超・少子化」解決には“子沢山優遇”税の導入を

フランスの施策を参考に日本の少子化対策を考察

フランスの施策を参考に日本の少子化対策を考察

 少子化は国の未来を左右する大きな問題だが、日本ではいっこうに出生率回復の兆しが見られない。それどころか、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、さらに少子化が進んでいる。日本はこの先、どうやって社会を維持してゆけばよいのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、「超・少子化問題」を解決する方法を考察する。

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 新型コロナウイルス禍の影響で、少子化がいっそう進んでいる。

 厚生労働省によると、2020年の出生数は2019年より2万4407人少ない84万832人で5年連続の減少となり、過去最少を記録した。1人の女性が一生の間に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率は2019年を0.02ポイント下回って1.34となった。年間出生数は2019年に90万人を初めて割り込んで86万5239人にとどまり、「86万ショック」と呼ばれたが、そこから2万4000人以上減ったのである。さらに、今年1~3月期の出生数は19万2977人で、前年同期を9.2%も下回った。

 また、2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組で2019年より12.3%減少し、2020年に全国の自治体に提出された「妊娠届」も87万2227件で2019年から4・8%減った。新型コロナ禍によって人が集まれないため結婚を延期するカップルや、医療態勢が逼迫する中で「産み控え」をする夫婦が増えているためとみられる。

 新型コロナ禍に見舞われて少子化が急加速しているわけだが、では、これから日本はどうすればよいのか? よほどドラスティックな仕掛けを作らないと、この流れは変えられないだろう。

 ヒントは欧米先進国にある。欧米では未婚女性の出産は“普通”であり、「婚外子」の割合が非常に高い。アイスランドは7割、フランスは6割、スウェーデンやオランダは5割以上で、OECD(経済協力開発機構)の平均やアメリカが4割だ。それに対して、日本はたったの2.3%である。学校が50人のクラスであれば、婚外子がアイスランドは35人、フランスは30人、アメリカは20人だが、日本は1人だけ、という計算になる。このままでは婚姻数の減少が少子化に直結することになる。

 この“壁”を越えるためには、まず、婚外子差別と少子化を助長している「家」単位の戸籍制度を撤廃しなければならない。日本では、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子供は戸籍上「非嫡出子」として差別されているが、親が結婚していようがいまいが、すべての子供は誕生した瞬間から「日本人」として国民データベースに登録し、国が責任を持って保護・育成すべきである。

 子供がどのくらい生まれるかは、意外と「経済合理性」が社会全体に反映されている、という視点も重要だ。たとえば、住居費が高い日本でパラサイト・シングルが増えるのが経済合理性からだとすると、欧米では成人してからも親と一緒に住むのは恥ずかしいという通念があり、その場合、若者が何人かで共同生活するのが経済合理性になる。

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