田代尚機のチャイナ・リサーチ

恒大集団の危機にどう対応? 中国特有の「市場経済の舵取り」

経営危機に陥っている恒大集団のビル(中国・上海。AFP=時事)

経営危機に陥っている恒大集団のビル(中国・上海。AFP=時事)

 株式市場の違法行為に対する、中国政府の締め付けが強まっている。中国証券監督管理委員会は9月24日、南リン民爆(深セン・002096)、今創集団(上海・603680)、昊志機電(深セン・300503)などの株価に関する“悪意のある操作(株価操縦)”に関連した人物を公表した。その中には、かつてテレビの証券情報番組に出演し、絶大な人気を博していた倚天投資管理公司の葉飛社長の名前もあった。ちなみに、この人物は2015年前半の大相場の際も株価操縦に問われ、稼いだ利益を没収されたいわくつきの人物だ。

 投機家や一部のファンドが数十もの証券口座に資金を分散させ、それを少数の銘柄に集中投資することで株価を吊り上げ、暴利を得たというのが理由となっている。これらの取引はもちろん、それ自体が違法行為である。

 しかし、最大の問題は、そうした犯罪者が“どうやって資金を調達したか”ではないだろうか。注目されるのは、ノンバンクと提携関係にあるネット系情報提供企業などから多額の資金を借りて株取引を行う“股票配資”、そして、いわゆる一任勘定の私募ファンドである“委託理財”だ。

“股票配資”は信用取引制度の枠組みを超えている点で、当局が嫌がる取引だ。業者側に対して強い規制を課しているのだが、お金に色があるわけではない。民間企業の自由な活動を妨げないように規制するのは難しい。

“委託理財”についても管理は容易ではない。実態からすれば、きちんとファンド、投資組合などとして登録しなければならない取引であったとしても、運用者が第三者からお金を預かる契約をして、運用者が個人名義で売買してしまえば、規制するのは難しい。

 結局、株式市場は、市場参加者の一部が結託して行動すれば、株価操縦が可能で、ほぼ確実に勝つことができる構造となっている。株式市場には、本質的に不公平、不平等に陥ってしまう大きな弱点がある。

西側諸国の常識とは異なる経済体制

 中国の国務院金融安定発展委員会は7月11日、第36回会議を開き、全面的に資本市場の違法犯罪行為を摘発する方針を示した。厳格に管理すれば、市場の活性は大きく落ちてしまうが、そうしたリスクを承知の上で、当局はいわゆるこの“零容認”政策を続けている。

 インターネット関連、ゲーム開発、教育関連、不動産開発といった企業から、投機家に至るまで、厳しい“粛清”が行われている。中国共産党は一体どこまで、“市場経済の修正”を続けるつもりなのだろうか。

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