中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「逆風の恵方巻き」食品ロス対策で予約要請も 今後も流行が続くかの分水嶺

逆風にさらされる恵方巻きの今後はどうなる?

逆風にさらされる恵方巻きの今後はどうなる?

 冬の風物詩としておなじみになった「恵方巻き」。節分に恵方(今年は北北西)を向いて太巻きを無言で食べるという風習だが、いまその恵方巻きが逆風にさらされている。ここ数年、節分後に売れ残った恵方巻きが大量廃棄されていることが明らかになり、食品ロスの観点からそのあり方を見直す動きも出ているのだ。はたして恵方巻きは今後どうあるべきなのか? ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が考察する。

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 2003年、私が雑誌『テレビブロス』の編集者だった時に、『そうだ、安く京都行こう』という特集を作ったのですが、この時、京都の私立大学の写真部の女子学生たちをカメラマンとして雇いました。そこで、彼女たちに京都に関するトリビアを色々と聞いたのですが、「節分に特定の方向を向いて黙って“丸かぶり寿司”を食べる」というものがありました。

 その時は、そんな風習初めて聞いたので、「なんつー奇習じゃ?」と思ったのですが、1990年代末に始まった大手チェーンによる「節分の丸かぶり寿司」販売は、2000年代中盤になると全国区に。「恵方巻き」の名は一気に普及しました。元々は文化的風習だったのでしょうが、そのビジネス的な起源についてははっきりしておらず、1940年に大阪鮓商組合後援会が「節分の丸かぶり壽司」の広告を出した、といった説もあります。あとは大阪の海苔の組合が、土用の丑の日に鰻を食べる風習があるのにヒントを受けたか、節分に丸かぶり寿司を食べる風習にすれば海苔の消費量が増えると考えたとの説もあります。

 1月の正月商戦が終わるとコンビニやスーパー、弁当チェーンなどで恵方巻きの予約販売を呼び掛ける横断幕やポスターが登場するのも今や冬の定番。まぁ、本音としては、「ニッパチ」と呼ばれる2月と8月の消費の落ち込みに対抗する目的でイベントを作りたいのでしょう。それで大成功したのがバレンタインデーです。海外の「大切な人に贈り物をする日」という風習を日本の某チョコレートメーカーが「女性が男性にチョコレートを贈る日」という設定にし、大ブレイク。「本命チョコ」「義理チョコ」「友チョコ」などと拡大解釈を続けました。

 ただし、日本記念日協会のデータによると、2016年のバレンタインデーの市場規模は1340億円で、ハロウィンの1345億円の後塵を拝しました。コロナ前の2019年は、バレンタインデーが1260億円で、ハロウィンが1155億円とのことで、いずれも減少しています。

 皆で同じことをして盛り上がる、といった昭和的風習が苦戦している様が見られますが、恵方巻きにとっての逆風は、他にもあります。

 まず、ここ数年は「コンビニ店員が販売ノルマを達成できない場合は自腹で購入させられる」ことの理不尽さが指摘されています。ツイッターに店員と見られる人が泣き顔文字などを使って悲鳴をあげる例が見られたことから、白日のもとに晒されました。

 もう一つは、廃棄量があまりに多い点です。2019年には、廃棄される恵方巻きの金額が全国で約10億2800万円に上るという試算が報道されています。この件を報じるニュースでは、巨大容器にギッシリと詰まった大量の廃棄恵方巻きも紹介され、衝撃を与えました。

 そうした状況を踏まえて、農林水産省は1月26日、食品小売事業者に対し、2月3日の節分の風物詩「恵方巻き」の予約販売を促進するよう呼び掛けています。これには大手スーパーやコンビニも応じる姿勢を見せていますが、そもそもこれ、関西地方特有の風習のままであれば、こんな騒ぎにならなかったんじゃないですかね。「その年の恵方を向き、一切喋らず一気に巨大太巻きを食べる」ってのは、珍しい風習だからこそ一部地域で大切にされてきたと思うんです。

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