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スマホ事業で失望のバルミューダ 求められる「成功モデル」からの転換

画面サイズが4.9インチと小型で、丸みを帯びたボディが特徴の「BALMUDA Phone」(写真/時事通信フォト)

画面サイズが4.9インチと小型で、丸みを帯びたボディが特徴の「BALMUDA Phone」(写真/時事通信フォト)

 高い品質とデザイン力でヒット商品を次々と生み出し、日本の家電業界に新風を巻き起こしてきた新興家電メーカーのバルミューダが、大きな試練の時を迎えている。はたしてここからどう巻き返していくのか──。

 同社が新たに手掛けた5Gスマートフォン「BALMUDA Phone」が1月7日、突如販売を停止し、その約1週間後に再開するという騒動が起きた。同社初のスマホとあって注目を浴びていただけに、ネット上では大きな話題を呼んだが、一体何が起きていたのか。スマホ業界に詳しいITジャーナリストの石川温さんが話す。

「今回の騒動のそもそもの原因は、モバイル通信で対応する一部の周波数帯域で、干渉ノイズが技術適合証明(技適)の許容値を超える可能性があることが発覚したこと。この問題自体はソフトウェアアップデートにより1週間程度で対処できており、特にユーザーにも被害は及ばない、大したことのないトラブルでした。

 しかし、BALMUDA Phoneの製造委託先である京セラが技適のミスに気付き、すぐにバルミューダとソフトバンクに連絡すると、バルミューダが即座に店頭販売を停止。その状況がSNSなどで拡散され、テレビやネットなど多くのメディアが取り上げて話題になってしまった。問題自体は深刻なものではないのに、『バルミューダ初のスマホが販売停止』という事実だけが広がってしまい、同社にとっては大きなイメージダウンとなりました。

 アップデートで簡単に対処できる問題だったことを踏まえれば京セラの“勇み足”にも思えますし、慌てて販売を停止したバルミューダの対応にも課題が残る騒動だったと思います」(石川さん・以下同)

 BALMUDA Phoneは、10万円以上という高額な価格設定に対して「スペックの高さが物足りない」などの声も出ており、発売当初から批判は少なくなかった。同社の株価も発売直後から失望売りが止まらず、発売計画を発表した昨年5月の6000円台から、現在は3000円台とほぼ半値まで下落。今回の騒動が株価下落に拍車をかけた格好だ。

「トースターや扇風機など、既に競争が無くなってしまった家電で新しい価値を生み出してきたあのバルミューダが、今度はスマホを出すということで、市場の期待値は相当高かったと思います。しかし、いざ発売されると、スペックは決して高くないのに高額で、デザインは初期のiPhoneを彷彿とさせるうえ、高級感もそれほど感じられないものに仕上がっていた。これまで期待に応え続けてきた同社だけに、失望が大きかったのでしょう」

 同社の2021年12月期第3四半期決算では、売上高110.8億円、純利益2.6億円と黒字を維持していることから、スマホ事業に費やした研究開発費5.6億円が同社の経営を圧迫している状況ではなさそう。ただ、BALMUDA Phone発売前に見込んでいた、2021年末までに同製品の売上高27億円という目標を達成するためには、仮に一台10万円として2万7000台ほど売らなければならない計算だ。販売停止騒動がBALMUDA Phoneの売上高目標に影響する可能性はあるだろう。

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