田代尚機のチャイナ・リサーチ

ロシア株が反転上昇、ルーブル高に 経済制裁の効果が相殺される理由

ルーブル紙幣と対ドルチャート(Getty Images)

ルーブル紙幣と対ドルチャート(Getty Images)

 G7はかつて7ではなく、ロシアを含めたG8であり、ロシアは先進国グループの一角を占めていた。2014年のクリミア編入を経て先進国グループから追放されたのだが、その後もグローバリゼーションの潮流は変わらず、欧州はロシアとの自由貿易を続けてきた。

 欧州とロシアとの経済的結びつきを考えれば、短い期間で取引関係を解消するのは難しい。エネルギーのような生活に必須の財に関しては特に難しいだろう。ロシアに対してドルでの取引を禁じれば、ロシアはルーブルでの取引を要求するだけである。

 ロシアへの制裁が原油の需給悪化を引き起こしているのは明らかで、原油価格の上昇はロシア側の利益拡大につながる。さらに、ロシア政府が国内企業に対して外貨のルーブルへの交換を強制させる措置をとり、ルーブルの需要を拡大させたが、その効果も大きい。

 ロシアの金融資産を持つ者にとって、ルーブル高は望ましい。制裁をかわす方法が自由な取引の中から生まれることで、制裁の効果は相殺されてしまう。

米国株は8週連続下落

 欧州の経済、金融はこの制裁の副作用よって、むしろ弱体化しているが、それは欧米機関投資家のリスク許容度を小さくし、米国市場でのリスク回避にもつながる。バリュエーションが安ければまだしも、ハイテク銘柄を中心に歴史的にまだ高い水準であればなおさらだ。それに金融引き締めによる需給悪化懸念が重なるから厳しい。

 NYダウは4月下旬に戻り高値を付けた後、下落トレンドを形成している。5月20日の終値は31,261.90ドルで4月20日と比べ11%下落している。過去最高値(終値ベース)は1月4日に記録した36799.65ドルなので、この間で比較すれば下落率は15%である。週足ベースでは3月最終週から先週まで、8週連続の下落だ。週明けの23日は前営業日比で1.97%上昇して引けているが、下落トレンド転換の一つの目安となる5月17日の高値を抜くには、まだここから2.5%程度の上昇が必要だ。

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