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4630万円誤送金問題、逮捕容疑の「電子計算機使用詐欺」とはどんな罪か 弁護士が解説

「電子計算機使用詐欺」とはどのような罪なのか(イメージ)

「電子計算機使用詐欺」とはどのような罪なのか(イメージ)

 山口県阿武町の給付金4630万円誤送金問題で、容疑者は電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕された。この罪は通常の詐欺とは何が違うのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 山口県阿武町で起きた給付金誤送金事件。受取人が逮捕され、代行業者からの返金もあり、収束に向かってはいますが、いまだに解せないのは、なぜ銀行がすんなりと出金を認めたのでしょう。怪しいと思ったら、相応の対応をするはず。また、古臭いネーミングの電子計算機使用詐欺とは、どんな罪ですか。

【回答】
 甲が乙の口座に振り込むつもりが、間違って丙の口座に振り込まれ、誤送金を知った丙が黙って引き出せば、正当な権限がないのに、銀行員を騙して払い戻しを受けたのだから詐欺になる、というのが判例通説でした。

 ところが、誤送金への強制執行の効力が争われた民事事件で、最高裁は平成8年に誤送金でも受取人と、銀行との間には預金契約が成立し、受取人の預金になると判断したのです。

 この民事事件とは関係ありませんが、誤送金を引き出して詐欺に問われた被告人が、その判決を盾に、自分の預金だから罪にはならないと主張した事件がありました。

 しかし、最高裁は平成15年に従来どおり詐欺の成立を認めました。その判決文の中で、受取人は誤送金を最終的に自分のものにする権利がないのであり、銀行に誤送金を告知する義務があるとしています。よって、黙って預金の払い戻しを請求するのは、欺罔行為(騙し)で、丙に権利があると錯誤に陥った銀行員を騙して払い戻させたのだから、詐欺罪が成立すると判断したわけです。

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