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元ソニーCEO・出井伸之氏の遺稿「あなたが人生のCEOであることを忘れないで」

1997年5月29日、ニューヨークで開催されたヒューマニタリアン賞での出井伸之氏。ルパート・マードック氏(左)、ソニーミュージック代表のトニー・モットラ氏とともに

1997年5月29日、ニューヨークで開催されたヒューマニタリアン賞での出井伸之氏。ルパート・マードック氏(左)、ソニーミュージック代表のトニー・モットラ氏とともに

 ここでも、自分が自分自身のCEOとしてまったく同じように考えられると思います。自分はどうありたいのか、どういう人生を歩みたいのか、長期的ビジョンを考えなければならないし、日々起こる問題や課題に向き合い、解決しなければなりません。

 人の一生を春・夏・秋・冬の四つの季節にたとえると、春は学びの時代、夏は働く時代、秋はリーダーシップの時代、冬はこれまでの経験を振り返り人生の幕を下ろす時代に分けられると思います。四季それぞれの年代は個人によって違います。彩りある一生を送る資本となる身体の健康を管理するためには、会社の財務を管理するCFO(最高財務責任者)のような存在も重要でしょう。私は現在84歳になり、初めて人生の秋、冬のビジョンを描く重要性を知りました。

 一人ひとりがその人自身のCEOであり、それぞれの信じるビジョンを描き、その実行のために決断、アクションを起こす必要があります。自分でできることもあればできないこともあるでしょう。自分でできないことは周りの力を借りて、またあなたが得意なことは、その力を周りの人のために使いながら、いくつになってもあなた自身があなたの人生のCEOであることを忘れずにいてください。

【プロフィール】
出井伸之(いでい・のぶゆき)/1937年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、1960年にソニー入社、外国部に配属。1962年スイスに留学。1968年フランスに赴任、ソニーフランス設立に従事。1979年オーディオ事業本部長、1988年ホームビデオ事業本部長を経て1995年に代表取締役社長に就任。2005年に会長兼グループCEO退任後、2006年にクオンタムリープ株式会社を設立。2022年3月に最後の著書となる『人生の経営』(小学館新書)を上梓。2022年6月2日に逝去。

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