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【日本株週間見通し】東京株式市場は神経質な展開か 米国の物価関連指標の結果も注目

 ただ、注意をしたいのはFRB高官らによるけん制発言だ。世界的な景気後退懸念により、米金利が大きく低下しており、足元の米10年物の実質金利(名目金利から期待インフレ率を差し引いた指標)は+0.2%台とかなり低い水準にある。実質金利の低下を背景にした株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の上昇を要因に株価上昇が続いているが、インフレ抑制を最優先課題としているFRBが、こうした緩和的な状況を許容し続けるとは考えにくい。

 来年末の政策金利水準を巡っては、早くも利下げを織り込み始めている市場と、来年も利上げを続ける方針を維持しているFRBとの間ではかなり乖離が出てきている。先週、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁はインフレ目標の達成には「程遠い」としたほか、セントルイス連銀のブラード総裁は、大幅な利上げを前倒しで実施すべきとし、政策金利を年末時点で3.75~4.00%とすることが望ましいとの見解を改めて示した。また、クリーブランド連銀のメスター総裁も、需要を抑制するために政策金利を、4%を少し上回る水準まで引き上げる必要があるとの考えを示した。利下げ転換について、ブラード総裁とメスター総裁は、幅広い指標で連続してインフレ減速が確認される必要があるとしており、今回の7月CPIが減速したとしても材料不足であることは否めない。

 インフレと利上げを巡る認識で市場とFRBの乖離があまりに広がり過ぎることは望ましくない。このため、株式市場が先走ってインフレピークアウト・利下げ転換という楽観的な見方に傾いて、上昇基調を強め過ぎてしまうと、FRBからのけん制発言が増えてくることが予想されるため、この点は注意したい。また、夏枯れ相場で、8月は例年ボラティリティーの高い時期になりやすいため、可能性は低いが、指標がネガティブな結果になった場合の揺り戻しには注意が必要だろう。

 ほか、4日の英国金融政策委員会では、27年ぶりとなる0.5ptの利上げがほぼ満場一致で決定された。イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は、次回9月以降の会合ではあらゆる選択肢を検討するともコメントした。さらに驚くべきは、インフレと景気の見通しだ。6月時点で前年比+9.4%と40年ぶりの高い伸びにまで加速している同国の消費者物価指数(CPI)について、中銀は前回6月の政策発表時にはインフレのピークは今年10月頃で、11%強と予想していた。しかし、今回は、ピークが13.3%になる見通しと大幅に引き上げ。また、今年10-12月期には景気後退(リセッション)に入り、来年末まで5四半期連続でリセッションが続くという。欧州では完全にスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)が現実のものとして台頭してきており、世界的な景気後退懸念にも注意したい。

 なお、今週は8日に7月景気ウォッチャー調査、9日に7月工作機械受注、10日に7月企業物価指数、中国7月生産者物価指数(PPI)、中国7月CPI、米7月CPI、11日に米7月PPI、12日にオプションSQ、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数が予定されている。

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