通貨の価値が下がるインフレに加え、マイナス金利が続く現下の状況では、現金や預貯金をいくら増やしても資産価値は目減りしていく一方だ。それを防ぐには、資産を積極的に振り分けていくことが求められる。
現預金に代わる資産の持ち方といえば、株式などへの投資があるが、投資には元本割れというリスクがつきもの。若い現役世代であれば別だが、老後資金を安定して確保することが非常に重要となる中高年以降は、投資先の選定により慎重な判断が必要となる。
老後資金の運用先は、どこがふさわしいのか。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏はこう言う。
「これからは物価上昇が避けられない状況なので、投資により物価の上昇率以上の運用益を得ることで、老後資金の目減りを抑えたいところです。とはいえ、中高年の方が投資に失敗すると、それを取り返す時間や収入がない。できる限り、リスクを抑えながら収益を確保していく必要があります。
その有力な選択肢となるのが、大きな儲けが出るわけではないが、リスクを抑えながらも一定の収益が期待できる『バランス型投信』。なかでも老後資金の運用には“リスクコントロール型”と呼ばれる商品が向いています」
具体的には、どのような商品なのか。
「バランス型投信とは、株式やREIT(リート=不動産投資信託)などのリスク資産と、国内債券のような安定資産を組み合わせたもの。その一種であるリスクコントロール型は、その時々の市場動向や将来予測などに応じて、リスク資産と安定資産の組み入れ比率を機動的に変更することで基準価額(投信1口当たりの時価)の下落リスクを抑え、安定的に年利3~5%程度の収益を目指すことが特徴です。
実際、リスクコントロール型は2020年のコロナショックですべての資産価格が大幅に下落した際にも基準価額の落ち込みが非常に小さく、その後も安定的な運用を実現したために、注目度が高まりました」
リスクコントロール型投信を購入している70代男性が言う。
「8年前に退職金の一部500万円を投資しました。今年は基準価額が下がっているものの、『下落リスクを低減しつつ中期的に安定した収益を獲得する運用』を謳う商品だけあって、信託報酬を差し引いても平均で年2%の利益を確保している。ざっくり言って毎年10万円、8年間で約80万円の含み益が出ています。その利益分があるので家電などを買い替えられた。妻にも喜ばれています」