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田代尚機のチャイナ・リサーチ

次のアリババ、テンセントはもう生まれない? 欧米投資家が懸念する中国の社会主義化加速

習近平一極体制の確立を欧米投資家はどう評価しているのか(Getty Images)

習近平一極体制の確立を欧米投資家はどう評価しているのか(Getty Images)

 前週のハンセン指数は▲8.3%、上海総合指数は▲4.0%と、それぞれ下落した。この間NYダウが5.7%、NASDAQ総合指数が2.2%それぞれ上昇しているのと比べると、中国市場の弱さが目立つ。

 弱さの理由は10月23日に発表された共産党指導部の人事であり、それに先立ち第20回党大会(20大)で発表された共産党新体制下における国家運営方針の内容にある。もう少し具体的に言えば習近平一極体制の確立であり、共産党の社会主義への傾倒にある。

 20大の報告によれば、新時代の中国共産党の使命・任務は「社会主義現代化強国を全面的に建設すること」であり、「中国式現代化を以て中華民族の偉大な復興を全面的に推進すること」と記している。さらに、中国式現代化とは「中国共産党がリードする社会主義現代化であり、各国の現代化と共通する特徴もあるが、国情に基づいた中国特有の部分もある」としている。

 経済発展に関する部分では、「新たな発展の局面を構築し、質の高い発展を推し進める」といった見出しを付けており、「高い水準の社会主義市場経済体制を構築する」ことを一番目に挙げている。その内容をみると、改革開放を否定したり、市場経済を否定するようなことは決して書いてないものの、国有企業改革を進め、国有経済を強化する一方で、権利保護、市場へのアクセス、公平な競争、社会信用など市場経済の基礎的な制度を改善し、経営、ビジネス環境を良くすると記している。イノベーションを牽引する民営企業に対しても一切特別扱いせず、彼らがブレークスルーする過程で生じてしまいがちな平等、公平、公正などの社会通念に反した行動は厳しく咎められることになりそうだ。これまで中国のイノベーションを牽引してきた民営企業の活力が削がれてしまうことを内外の投資家は懸念している。

 これまでは、米国側が一方的に米中デカップリング(切り離し)を仕掛けるだけで、中国側は少なくとも表面的にはそれに厳しく対抗するようなことはしなかった。しかし、新体制下では中国側も反撃に出る可能性がありそうだ。

 今後、中国本土の民営企業と欧米のベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、金融機関が一体となって、ビジネスを成功させ、最終的には海外市場に上場させて、成果を得るといったやり方は激減するかもしれない。これは、アリババ、テンセント、バイドゥ(百度)、BYDなど、中国のイノベーションを牽引してきた企業の成功パターンであり、それがなくなるかもしれないということだ。グロース銘柄が魅力である香港市場ではその点が気になるところだ。

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