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霊感商法と悪徳商法に共通する手口 元統一教会信者が明かす「恐怖心」で人を操る方法

霊感商法と悪徳商法の手口に共通する点は何か(写真:イメージマート)

霊感商法と悪徳商法の手口に共通する点は何か(写真:イメージマート)

 人の不安につけこみ、高額な壺や印鑑を言葉巧みに売りつける「霊感商法」が社会問題となった。その後、形を変えて多額の献金をさせる手口にもなっている。旧統一教会による被害者救済をめぐり、悪徳商法の対策となる消費者契約法などの改正案が国会に提出が予定されている。霊感商法や巷にあふれている悪質商法に人はなぜ騙されてしまうのか。元統一教会信者で、詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明氏が、自身の体験も交えて解説する。

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 旧統一教会の仕掛けるマインドコントロールにまんまとはまり、教団の信者として約10年近い時を送りました。そこではどんな心理的誘導が現場で行われているのかを私の体験をもとにお伝えします。今回は「恐怖心」の植え付けかたについてです。

 正体を隠して近づき、自らの話の方向に引き入れようとするのは、旧統一教会に限らず、あらゆる詐欺や悪質商法にもみられるものです。昨年、いわゆるマルチ商法で問題視されてきたアムウェイの勧誘者が、恋人を探すはずのマッチングアプリを使って、目的を隠しながら近づくという法令違反の勧誘行為をしていたとして逮捕されました。さらに今年に入って、アムウェイは行政処分を受けています。

 マインドコントロールする上での重要なファクターは何といっても「恐怖心」です。世の中にある悪質商法の手口では、恐怖心を感じさせながらその場で高額商品を買わせるという短期的な教化方法を行います。突然に訪問業者がやってきて「契約しなければ、帰らない」という怖さを覚えさせながら、契約をさせるのは常套手段です。

 先にあげたマッチングアプリを使って出会い、異性を勧誘する場合も同じです。相手は心には恋愛感情を抱かされているために「別れる」ことへの恐怖があります。それゆえに相手の意のままに行動をしてしまいがちになります。近年のマルチ商法の勧誘では、参加するにあたっての費用である数十万円を借金して出させるケースも多く、お金を出した人は借金の返済に追われる恐怖心から、必死になって誰かを勧誘しなければならなくなります。しかし短い期間で、矢継ぎ早で行うマインドコントロール的手法は、即効性はあるけれども、解けやすい側面もあります。

 次に振り込め詐欺ではどうでしょうか。最近は、相手を騙すために虚を突く手口がよく使われますが、詐欺犯は警察を装い「あなたのキャッシュカードで不正なお金の引き出しがあった」と高齢者宅に電話をかけて、不安にさせたうえで「警察署にきて被害届を出してください」といいます。拙著『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より、一部引用します。

〈「(不正なお金の引き出しの件で)警察に来てほしい」と電話で言われて話しているうちに、その途中で、急に「巡回している警察官が家に行きます」と話を切り替えて、不意打ちを食らわせる形でカードを詐取するという事例もあります。ただでさえ、「警察」「カードによる不正引き出し」と言われて、パニックになっているところに、いきなり話の流れを変えるのです。こうなると冷静になれずに誘導されやすくなります〉(『信じる者は、ダマされる。』より)

 この手口にあるのも、犯罪に巻き込まれているという「恐怖心」です。しかしこれは一過性のものなので、時間をおけば詐欺に遭ったと気づく方が多くいます。

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