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日本の社会風土で追い込まれた女性たちが新興宗教から搾取されるいびつな構図

当てはまる項目が多いほど、新興宗教の勧誘ターゲットにされやすい(監修/精神科医の片田珠美さん)

当てはまる項目が多いほど、新興宗教の勧誘ターゲットにされやすい(監修/精神科医の片田珠美さん)

 さらに女性にとって大きな転機となるのは出産や育児だ。女性の社会進出が進んで共働きが当たり前になっても、日本では「育児は女性」との意識が根強く、夫は頼りにならない。いくらイクメンがもてはやされても男性の育休取得は超レアケースで、ワンオペ育児で多大な自己犠牲を強いられる母親の心が休まるはずがない。

「日本は子育て環境の風通しが非常に悪く、多くの女性が妊娠や出産、育児や家庭に不安を抱えています。特に育児について本当にこれでいいのかと悩み、“子供のアトピーを治してあげたい”“虚弱体質を改善させたい”との願いから、代替医療や『自然な育児』、マクロビオティックなど宗教に近い世界観を持つ『スピリチュアリティー』にのめり込む女性がネットを中心に目立ちます」(橋迫さん)

 新宗教には、孤独で閉鎖的な日本の家庭の中で思い悩む女性たちに、「生きる意味」を与えるポジティブな面もあると橋迫さんが続ける。

「不安を抱えて家庭におけるアイデンティティーを失った女性に対し、新宗教は家庭の中で彼女がどういう存在であるべきなのかを示します。そもそも来世を大切にする伝統宗教と違い、新宗教は現世での幸せを獲得することを重視し、『貧・病・争』と戦うことが教義の基本。多くの女性にとって、それを実践する場はまさに家庭です。それゆえ、スピリチュアリティーや新宗教が必要とされてきました。現世の幸せが女性にとって、切実な問題であることを理解する必要があります」(橋迫さん)

 精神科医の片田珠美さんは、女性の一生の「報われなさ」を指摘する。

「男性は大学まで勉強したらあとは仕事の人生ですが、女性は仕事だけでなく恋愛や結婚、出産、育児、家族とのつきあいなど論理だけで解決できない多くの問題を抱えます。しかも自分が努力しても必ずしも報われず、生まれた子供に障害があるとか、義母がものすごく意地悪とかいうシビアな現実に直面すると、もう自分の努力ではどうにもならないとの気持ちになり、スピリチュアリティーや宗教にはまりやすい。根底には女性に多くの負担を強いる日本の社会風土があります」

 安倍晋三元首相を銃殺した山上徹也容疑者の母親は、旧統一教会に1億円以上を献金としてつぎ込んできたが、その一方で、夫や長男を“不幸な最期”で失っている。

「山上容疑者の母親のように不幸が重なる人間はつけ込まれやすい。教団は悩みや不安を抱く女性の心に届くような話をする一方、霊感商法をほのめかして“ここで決断しないと、お子さんに悪いことが起きる”と宗教的な脅迫を行い、どんどん深みへと誘うのです」(竹迫さん)

 真の問題は、深い悲しみの中で救いを求める女性に宗教が手を差し伸べることではなく、日本独自の風土のもとで、追い込まれた女性がさらに搾取されるいびつな構図にある。

(*この企画内の新興宗教は、主に「カルト」や「新興宗教を偽装したカルト」を指す)

※女性セブン2023年1月5・12日号

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