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AirbnbもiPhoneも逆風を越えて成功 「本当に良いアイデア」が多くの人に賛成されないのはなぜか

iPhone発売当時も否定的な声は少なくなかったという(2007年1月、iPhoneを発表したアップルのスティーブ・ジョブズ氏。AFP=時事)

iPhone発売当時も否定的な声は少なくなかったという(2007年1月、iPhoneを発表したアップルのスティーブ・ジョブズ氏。AFP=時事)

 誰かがアイデアを提案すると、組織で多角的に検討され、その際に多くから「すごく良い」と賛同を得られれば、そのアイデアは具体的な商品開発やプロジェクトとして始動する。逆に大半から理解されなければ“ボツ”になる。そうした決定・判断のプロセスはどの企業でも採用されているだろう。しかし、「皆から良いと言われるアイデアは、本当に良いアイデアではない可能性が高い」と指摘するのは、新刊『デザイン思考2.0』を上梓したばかりの起業家の松本勝氏だ。「人の創造性」を可視化するAI技術を独自開発し、日米で特許を取得した松本氏(VISITS Technologies代表)が、その意図を解説する。

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 世界的オンライン決済サービス「PayPal(ペイパル)」の創業者で、著名な投資家でもあるピーター・ティールは、「多くの人が賛成しない大切な真実を見つけよ」と語っています。これは、「本当に良いアイデアは、多くの人にとって理解できない。なぜなら、本当に良いアイデアはあなただけが知っている秘密(=真実)を含んでいなければならないからだ。皆が理解できる(=秘密がない)時点で良いアイデアとは言えない」という意味です。

 今や時価総額10兆円を超える巨大企業「Airbnb(エアビーアンドビー)」の創業にも同様のエピソードがあります。共同創業者であるブライアン・チェスキー、ネイサン・ブレチャールチク、ジョー・ゲビアの3人は、未上場の新興企業を対象にしたベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達にことごとく失敗し、それぞれのクレジットカードの借金でビジネスをスタートしたのです。

 なぜVCから資金調達できなかったのでしょうか。それは、「見ず知らずの他人と部屋を喜んで共有するなんてバカげた考えだ」と思われたからです。現在のAirbnbの大成功を見れば、世界的に著名なVCでも「本当に良いアイデア」を見極めるのは難しいことを示しています。

 しかし、どれだけ出資を断られてもAirbnbの創業者たちは自分たちのアイデアを信じ続けました。彼らは2007年に地元・サンフランシスコで開催されたある会議の参加者向けに、エアベッド(AirBed)と朝食(Breakfast)を用意して、自分たちの部屋を1泊80ドルで貸し出した経験がありました。これがAirbnbの名前の由来です。そして、その時の「赤の他人と経験した共同生活の素晴らしさ」が、“自分たちだけが知っている秘密”となったのです。その素晴らしさを世の中の人たちはまだ経験していないだけで、「もし実際に経験すれば、きっと多くの人がその素晴らしさに気づくだろう」と彼らは確信していたのです。

 iPhoneが世に出てきた時にも同じようなことが起きていました。まだiPhoneを持っていない人が、iPhoneを使っている人に、「そんな機能、要らなくない?」と冷ややかに言っていた場面が多かったのです。人は経験しないとその良さがわかりません。多くの人は経験していないにも関わらず、自分の想像だけで良し悪しを判断しがちなのです。

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