野田佳彦氏は財務省からどう見られているのか(時事通信フォト)
財務省の権力を語る際にかかせないのが政治家とのネットワークだ。財務省は立憲民主党代表の野田佳彦氏に早くから目を付けていたという。首相となった野田氏は2012年、財務省の悲願であった消費税の引き上げを決定した。夏の参議院選挙を控え、再び消費税と野田氏に注目が集まる中、その関係性について、元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏の著書『財務省 バカの「壁」 最強の“増税マシーン”の闇を暴く』より一部抜粋・再構成して解説する。
絶妙なタイミングで“消費税劇場”に戻ってきた野田氏
私が財務省を辞めて以降、現在まで消費税をめぐる議論の火種は相変わらずくすぶり続けている。そして、かつてないほど税に対する国民の意識が高まるなか、まるで計算しつくされた演劇を見ているかのように、絶妙なタイミングで“消費税劇場”の主要人物が舞台に戻ってきた。2024年9月、12年ぶりに政党トップに返り咲いた野田佳彦氏である。
12年前、民主党の党首だった野田氏は、一体財務省とどう向き合ってきたのか。その足跡から、今に至る消費税、呪縛の道筋が見えてくる。
小泉純一郎政権、続く第1次安倍政権のときには、かろうじてできていた増税派の封じ込めは、福田康夫内閣、麻生太郎内閣で崩れだし、民主党政権の誕生で完全に崩壊した。ご存じの方も多いと思うが、安倍さんの民主党政権に対する評価は辛辣だ。回顧録(注:『安倍晋三 回顧録』)では、当時、永田町は財務省一色だったといい、このように民主党政権の本質を突く。
〈時の政権に、核となる政策がないと、財務省が近づいてきて、政権もどっぷり頼ってしまう。菅直人首相は、消費増税をして景気を良くする、といった訳の分からない論理を展開しました。民主党政権は、あえて痛みを伴う政策を主張することが、格好いいと酔いしれていた。財務官僚の注射がそれだけ効いていた。〉
財務省は、おそらく早くから野田氏にも目をつけていたのではないかと思う。現に、財務省内での野田氏のあだ名は「使い勝手佳彦さん」だ。そして野田氏は実際、「使い勝手のよさ」を買われて財務副大臣、財務大臣を経て総理の座に就任した。