調子に乗って辛くしすぎるのも考えもの(写真:イメージマート)
人生は挑戦の連続だが、挑戦の中には「そんなことしなくてもよいのでは……」というものがある。辛い食べ物が好きだというネットニュース編集者・中川淳一郎氏は、時に「辛さへの挑戦」をしてしまうのだが、後悔することもしばしば。人はなぜ懲りずに無用な挑戦をしてしまうのか。そんな客をお店側はどう受け止めているのか──。中川氏が自身の経験を振り返りながら考察する。
* * *
飲食店で「1辛~5辛:無料 6辛50円追加、以降10辛まで10円ずつ追加」なんて書いてあると「よーし、挑戦するわ。当然10辛だ!」という気持ちになってしまいます。しかし、気分が高揚するのは一口目を食べる時まで。
毎度「やらかした……」と呆然とする辛さなわけです。カレーチェーン・CoCo壱番屋で「10辛」を頼んだ時は、普段とはまったく異なる粘度のカレーにまずは仰天し、本来茶色であるはずのカレーが黒っぽくなっているのに続いて怖気づきました。
そして食べてみたら想像以上の悶絶の辛さで常に「ヒャー!」と叫びながらカレーを食べ続けるという人生初の体験をしたのです。完食した後も舌のヒリヒリは続き、翌朝のお便所でも下の方から悶絶の刺激がやってくる。「2辛」ぐらいに留めておけばいいのに、つい10辛にしてしまった自分を恨むものの、その時の挑戦したい気持ちは我ながら理解してあげなくてはならない。
グリコのレトルトカレー「LEE」は、5倍・10倍・20倍・30倍の辛さがあります。これまで「辛さ増強ソース」として、10倍辛くなる小袋がついていることもありましたが、30倍のLEEに7個の辛さ増強ソースをかけて「100倍だ、オラ!」なんてことも挑戦した。それがウマいのかどうかは関係ない、というか分からないのですが、「100倍にした」という事実だけで満足してしまったのです。
私と店の“辛さ対決”の原点は南船橋の台湾料理店
最近でも「10辛」まである佐賀県唐津市の混ぜそば屋「麺屋なら」に行き、10辛を食べましたが、余裕でした。次に訪れた時、店長に「10辛、余裕でしたよ! その上はあるんですか?」と聞いたら「12辛までありますよー」との返事。
そこで12辛にしたところ、あまりにも辛すぎて半分ぐらいしか食べられず、後は家に持ち帰りちびちびとビールのつまみにするようになりました。この手の店は、辛さのMAXは設定しつつも「これじゃ甘いんだ、オラ!」と言う客に対して「この野郎、ウチをなめるな!」とばかりにその店なりの対抗策を用意しているのではないでしょうか。
このまぜソバ屋については、11辛は多分「20辛」で、店が設定した上限の「12辛」は「50辛」だったのでは、と思います。店にしても「この程度かよ(笑)」と辛さをバカにする客にお灸を据えるべく、すさまじい辛さに突然持っていく。