コメ不足への政府の対応をふたりはどう評価しているのか(左から楽天・三木谷浩史社長、国民民主・玉木雄一郎代表)
国民民主党代表の玉木雄一郎氏(56)と楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏(60)。ともに政界、財界で既得権益の「壁」を壊そうと行動し、それゆえに強い“逆風”に晒される局面も目立つ。そんな2人が初対談。日本が抱える問題点とその解決策について激論を交わした。ジャーナリスト・大西康之氏が聞き手となった対談の中から、コメ政策について語り合った部分を紹介する。
コメ政策は“地域の選挙対策”か
──まずは国民にとって切実な問題であるコメ価格高騰について。三木谷さんはネットショッピングの楽天市場でもこのほど政府備蓄米の販売を始めましたが、どうですか。
三木谷:1万個(1袋5キログラム)が1分で売り切れますね。お米の値段を上げていきたいという考え方があり、私自身も徐々に値段が上がっていくのは悪いことではないと思いますが、それが過度になって需給バランスが崩れたのだと思います。
備蓄米のネット販売は、我々がしゃしゃり出たというより、ネットで売ったほうがリアルの店頭に並べるより消費者に早く届くという部分もあって、政府の意図も汲みながら乗り出したわけです。全く利益は出ませんが。
──玉木さん、そもそもコメ不足への政府の対応はどう評価しますか。
玉木:(備蓄米放出を入札から随意契約に切り替えた)小泉進次郎・農水大臣の政策は評価しています。ただ心配なのは、農協が悪い、卸が悪い、小売が悪いと犯人探しが始まることです。問題は自民党農政にある。大きく2つの問題があります。
1つは全く当てにならない作況指数と需要予測。政府はこれまでずっと「コメは余っている」と言い続けてきましたが、結局足りない。もう1つは、減反政策をやめたと言いながら、実際には農家が主食米を作らないようにしてきた政策です。大規模災害が起きたわけでもないのに主食のコメが国民に届かないのは、明らかにこれまでの自民党農政の失敗です。
三木谷:農業関連の法律には詳しくありませんが、農業をビジネスとして行なう動きが必要だと思います。働き手が不足するこれからは、農業もAI(人工知能)によるオートメーションが進むわけで、そのためには農業法人化を推進すべきです。
玉木:日本のコメ農業ではイノベーションが起きていない。それは国がコメの価格を維持するために「(量を)作るな」という政策を続けてきたから。国家統制が色濃く残っている。価格政策から所得政策に切り替えていくべきです。
三木谷:あえて本音を言えば、そこは食料安全保障を免罪符にした「地域の選挙対策」という側面もある。食料も多様化していて、コメという一産業だけを保護するのは難しくなっている。そこはもっとグローバルスケールで考える必要がある。
玉木:先進国はどこでも農業に対する所得補償はやっていて、問題はどうやって市場を歪めずに保護するのか、ということでしょう。農政は抜本的に変えていく必要がありますが、主食のコメだけは自給率100%でいくべきです。
【プロフィール】
玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)/1969年、香川県出身。1993年に東大卒業後、大蔵省(現・財務省)入省。2005年、財務省を退官し衆院選に出馬するも落選。2009年衆院選で初当選。希望の党代表を経て2018年に国民民主党代表となり、2020年の新・国民民主党設立以降も代表を務める。
三木谷浩史(みきたに・ひろし)/1965年、兵庫県出身。1988年に一橋大卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、1997年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。
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マネーポストWEBでは、今回の対談の完全版記事『【1万字超ロング対談】国民民主・玉木雄一郎代表×楽天グループ・三木谷浩史会長が激論「既得権の“壁”を壊せ」』を公開している。そこでは、コメ高騰、減税、働き方改革への両者の見解と支持率が急落している国民民主党の玉木氏に対して三木谷氏が求めた“注文”などについて詳しく紹介している。
※週刊ポスト2025年7月11日号