進学校の「大学合格実績」を見る際の注意点とは?(写真:イメージマート)
中学受験の学校選びで、多くの保護者が重視するのが「大学合格実績」だ。特に、「国公立大学や難関私立大の合格者数」は重要な指標で、多くの学校が公式サイトで、「国公立大学合格○人!」などと誇っている。しかし、その裏では、合格実績の見栄えを良くするために“禁断の技”に手を染める学校もあるようだ。フリーライターの清水典之氏が、その実態について詳しい識者に取材した。
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受験情報を扱うSNSを見ていると、こんな発言をしている受験生らしきアカウントを見かける。
「指定校推薦で私立大への進学が決まっているのに、進路指導で担任から、『国公立大を受けて学校の合格実績に貢献しろ』とうるさく言われた」
私立大に指定校推薦で合格した場合、入学辞退はできないので、国公立大に合格しても進学できないが、それでも学校の合格実績を上げるために受けろと言われたというのだ。こんな声もあった。
「第一志望が私立大学なのに、担任が国公立大学を受けるよう強要する。断ったら、『受験するのが学校への礼儀だ』と言われた」
国公立大を受験することがなぜ“学校への礼儀”なのか、よく意味がわからないが、合格しても進学する予定のない大学を生徒に受験させようとする実態があることを窺わせる書き込みだ。
「国公立大合格者の半数以上が進学しない」私立校も
少子化時代を生き残るため、合格実績の向上に駆り立てられている高校は少なくない。それがエスカレートした結果、国公立大に進学する意志のない生徒にまで受験させて、合格実績を稼ごうとする学校も存在しているようだ。
『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと』(Gakken)著者で、フォロワー5万4000人のXアカウント「東京高校受験主義」を運用する東田高志氏はこう言う。
「首都圏の私立中高一貫校のなかには、国公立大に合格した生徒の半数以上が、実際には別の大学に進学している学校があります。こうした学校の合格実績には、入試偏差値が低い、地方のあまり名前の知られていない国公立大が並んでいたりする。地元出身なら別ですが、首都圏在住の生徒が、本当に進学する気があってそれらの大学を受けたのかは疑わしいところ。国公立大は学費が安いと言っても、地方で下宿すれば家賃や生活費がかかり、首都圏の私立大に通うのと変わらない出費を伴います。合格実績を稼ぐ目的のため、進学する気のない生徒にまで地方の国公立大学を受けさせているのでは、との疑問が生じるのです」
昔と違い、今は国公立大学も数が増え、地方のいわゆるFラン大学が定員割れして経営難に陥り、公立化して再生した大学も10数校ある。しかし、一般には「国公立大は難関」というイメージも根強く残っているため、その合格者数が多ければ「進学実績が高い学校」と映るというのだ。
しかし、合格した国公立大に進学しないケースがあるのは、単に、それらの生徒の第一志望が私立大だっただけではないか。