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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

MRIの画像診断でも原因が特定しにくい「慢性腰痛」、痛みの感じ方には脳が深く関係 運動器の障害か精神医学的な要因か、見分ける検査方法とは【専門医が解説】

腰部脊柱管狭窄を起こしている神経(右)と正常な神経(左)

腰部脊柱管狭窄を起こしている神経(右)と正常な神経(左)

 腰痛に悩まされるビジネスマンは多いが、その原因はMRIでも判明できず85%は原因不明とされる。慢性腰痛は関節や筋肉との関連があるほか、脳とも深く関係しているという──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、整形外科医として脊柱管狭窄症に対する低侵襲治療法の開発など、脊椎・脊髄の疾病を中心に研究・診療してきた脳神経疾患研究所附属総合南東北病院・紺野愼一院長が解説する。【慢性腰痛と脳機能の関係・前編】

76%が「痛くない椎間板ヘルニア」

 3か月以上痛みが続く慢性疼痛の中で最も痛みを訴える部位は「腰」です。厚生労働省が実施した大規模疫学調査によると、40歳以上の慢性腰痛患者は1580万人にのぼると推計され、調査対象の約15%の患者は中等度以上の強さの痛みが6か月以上継続していると報告されています。

 慢性腰痛の原因としては、ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、筋筋膜性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛、内臓由来の腰痛などがありますが、はっきりと原因が特定される慢性腰痛は患者全体の10~15%にすぎず、85%は原因不明とされています。

 1995年に報告された椎間板ヘルニアに関する画像検査による大規模な調査結果では、今まで腰痛を感じたことがなく現在も腰痛がない人を対象にX線とMRI(機能的磁気共鳴画像装置)撮影を行なうと、驚くことに被験者の76%がヘルニアであることがわかりました。神経は圧迫されているにもかかわらず、痛みを感じていない──いわゆる無症候性椎間板ヘルニアが76%も発症していたのです。これは画像の所見で障害があっても、それが必ずしも「痛み」という症状に結びついていないことを示しています。

客観的な評価方法、診断基準がない

「痛み」は個人それぞれが感じるもので、客観的な指標はありません。急性腰痛の場合は、画像診断で脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、胸椎圧迫骨折などの障害箇所が見つかり、痛みの症状が一致するため診断と治療が可能となります。

 しかし、慢性腰痛は障害箇所が見つからないケースも多く、筋筋膜性腰痛や椎間板性腰痛、仙腸関節痛を疑うことはあっても、確定することは容易でありません。「腰の構造自体に問題があって痛い」「神経が傷ついて痛みや痺れがある」「脳に何らかの変調が起きて、痛みに対する感度が高くなり、ちょっとした刺激にも過剰反応する」など、様々な要因が考えられます。つまり、慢性腰痛にはいまだに客観的な評価方法がなく、診断基準がないということです。

 医師は慢性腰痛の患者に対して、まずがんや感染症、骨折といった重篤な病気がないか検査します。この3つが該当しなければ、続いて椎間板の障害の有無を調べます。患者はこの時、立ってお辞儀をして、続いて後ろに反る動作をします。お辞儀をすると痛みが出るのに後ろに反るのは問題ない場合、椎間板が圧迫されてことが多いので椎間板の障害が疑われます。

 そこで症状と画像が一致しているかどうかをMRIと照合して診断するのですが、原因が特定されることもありますが大半の場合は異常が見つかりません。MRI画像でも障害がなく、お辞儀しても痛まず、反っても痛くないが、腰部を押されると飛び上がるほど痛いという原因不明の慢性腰痛が85%にものぼるのです。

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