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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

慢性腰痛患者の「萎縮した脳」は治療でもとに戻すことができる 治療の第一選択肢は運動療法と認知行動療法の組み合わせ【専門医が解説】

視床や前頭前野の体積が減少している慢性腰痛患者の脳(A)と、灰白質が最も減少した時の視床のスライス画像(B)。萎縮の程度は疼痛期間に関連する。Apkarian AV et al. J Neurosci 2004

視床や前頭前野の体積が減少している慢性腰痛患者の脳(A)と、灰白質が最も減少した時の視床のスライス画像(B)。萎縮の程度は疼痛期間に関連する。Apkarian AV et al. J Neurosci 2004

 デスク業務に忙殺されるビジネスパーソンにとって職業病とも言える慢性腰痛は、運動器の障害だけでなく、痛みを感じる脳の影響も少なくない、と指摘されている。その一方で、訓練と体操で腰痛と脳機能の改善が期待できるという──。シリーズ「医心伝身プラス 名医からのアドバイス」、整形外科医として脊柱管狭窄症に対する低侵襲治療法の開発など、脊椎・脊髄の疾病を中心に研究・診療してきた脳神経疾患研究所附属総合南東北病院・紺野愼一院長が解説する。【慢性腰痛と脳機能の関係・後編】

慢性腰痛患者の脳は委縮している

 脳の表面は分野ごとに小さく分かれていて、手足を動かす場合は「運動野」がその働きを担っています。1990年代になると「f(ファンクショナル)MRI(機能的磁気共鳴画像装置)」が登場し、脳の特定の場所が身体のどの部位と関連しているかを確認することができるようになりました。例えば、腕に水をつけた場合、脳の辺縁系が反応することになります。

 ところが、慢性腰痛の患者の場合、腰に圧迫刺激を与えても、辺縁系はまったく反応しません。また、腰痛のない正常な人の腰に圧迫刺激を加えると脳からドーパミンが放出されますが、慢性腰痛患者の場合はそのドーパミンも出ないのです。これは慢性腰痛の患者の脳が何らかの理由で刺激に反応できないということで、原因は脳が委縮していると考えられます。

 私と精神科の医師が共同で行なった調査では、慢性腰痛患者の脳の血流量が明らかに低下していることがわかりました。脳の回路が傷つき、脳が委縮しているため、血流量が低下していたのです。アルツハイマー病も脳が委縮しますが、アルツハイマー病で委縮するのが「新しい脳」なのに対して、慢性疼痛で委縮するのは「古い脳」です。ただし、新しい脳は委縮すると元に戻りませんが、古い脳は委縮しても治療で元に戻ることがわかっています。

次のページ:自己判断でなくチーム医療で委縮した脳を取り戻す
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