大谷翔平のCM起用で話題の企業の業績は?(写真:時事通信フォト)
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手を起用したCMや広告を目にする機会が多い。大谷選手を起用する企業にとってその効果は業績にどのように現れているのか。今回は、最新決算をもとに、そうした企業の業績や起用の意図について個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が分析し、解説する。
* * *
9月に開催された世界陸上などのスポーツ中継枠では大谷翔平選手の出演CMが目立った。なかでも日清製粉ウェルナのCMは繰り返し放映され、ブランドの存在感を一段と高めた印象だ。広告は話題作りにとどまらず、実際の店頭販売、そして今後の決算に波及する可能性を秘めている。
投資家としての視点では、各企業の決算短信や中期経営計画を確認し、プロモーションに大谷選手を起用するという戦略の背景も知ると企業への投資判断をおこなう上で役に立つだろう。今回は広告に大谷翔平を起用する代表的な上場企業の事例を通じて、広告戦略が企業業績と投資価値に与える具体的な影響を考察してみたい。
日清製粉グループ本社(2002)
日清製粉ウェルナは日清製粉グループの食品事業の中核を担う企業であり、2024年11月に大谷選手と広告出演契約を締結し、2025年3月から「マ・マー」パスタの新テレビCMを全国展開している。特に注目されたのは世界陸上などの大型スポーツイベントでの集中的なCM展開である。世界陸上のような注目度の高いスポーツイベントでのCM投下は、通常の番組枠とは比較にならない広告効果をもたらす。
同社は小麦粉市場、パスタ市場、パスタソース市場、冷凍パスタ市場でシェアNo.1を誇り、「マ・マー」ブランドが食品事業の中核を担っている。大谷選手のCMでは「いいもの、食べよう。」のメッセージのもと、大谷選手がオレンジ色のエプロン姿でパスタ作りに挑戦する内容となっている。
5月15日に発表された日清製粉グループ本社(2002)の2026年度3月気の業績予想は、売上、利益ともに過去最高を見込んでいるものの、7月31日に発表された2026年3月期第1四半期決算においては営業利益、経常利益ともに減益となった。中期経営計画の最終年度として掲げていた2026年度目標である売上高9500億円、営業利益570億円に向けて、ここから更なる業績成長が必要となる状況に置かれている。
一方、大谷翔平を起用した販売プロモーションにおいては、企業ブランド、各商品の認知拡大・購買促進に向けた取組みが奏功し、家庭用パスタの日時出荷は宣伝施策開始から前年比109.5%、前々年比119.1%と大きく伸長している。
また、コスト上昇分を吸収すべく、価格改定、不採算工場の閉鎖と工場集約による生産効率化、原料輸送コスト・人物件費の削減にも精力的に取り組んでおり、デジタル化、AI活用による各管理の最適化、生産プロセスの自動化・標準化を推進にも余念がない。
中期経営計画必達に向けた同社の挑戦的な取り組みと怒涛の追い上げが今後業績としてどのように反映されるか注目だ。