勝手に言いふらして…(イラスト/大野文彰)
ネット社会において慎重に扱うべきは“個人情報”だ。ちょっとした個人情報がネット上で拡散され、何らかの被害を被る可能性は無視できない。では、もしも職場の人間に、自分の個人情報を言いふらされてしまった場合、その上司を罪に問えるのだろうか──。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
パート従業員として福祉施設で働いていますが、私の子供に障害があることや夫の勤務先など、私の家族の個人情報を上司が勝手に言いふらして困っています。
本社に伝えようと思っていますが、本社に責任を問うことはできますか。また、この上司を訴えた場合、刑事上はどんな罪に問えるのか、民事上はどれくらいの損害賠償を求められるのか教えてください。(大阪府・58才女性・パート)
【回答】
子供の障害や配偶者の勤務先はやたらに他人に知られたくない個人情報で、あなたが仕事をするうえでも、福祉施設の業務の運営上においてもまったく知る必要がない情報です。職場で言いふらしている人物は上司であって、あなたにとっては面と向かって苦情や抗議などをしづらい相手です。つまり、上司は優越的立場にあるからこそ、あなたの個人情報を職場で話していると言えます。
上司の言動であなたは困っており、この上司の行為は労働施策総合推進法(以下「法」)が対処する「職場におけるパワーハラスメント」に該当するかが問題になります。