脳活動データを用いて外部機器を動かすBCI技術が中国で急速に発展(山東省青島市。Getty Images)
中国経済に精通する中国株投資の第一人者・田代尚機氏のプレミアム連載「チャイナ・リサーチ」。今回は中国における「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」技術の現在地についてレポートする。
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脳とITを融合させた技術「ブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)」においても、中国が米国を猛追している。
上海階梯医療科技は11月13日、独自開発した「埋め込み型ワイヤレスBCIシステム」が国家医薬品監督管理局医療機器技術審査評価センターによる革新的な医療機器特別審査プロセスに正式に承認されたと公表した。これにより、迅速な審査承認や、登録料減免などの優遇措置を受けられるのと同時に、各政府部門からの積極的な支援を得ることができる。開発にかかる時間を節約し、コストを削減できるようになる。
同社研究グループは3月25日復旦大学付属華山医院において、高圧電圧ショック事故によって四肢を失った患者に対してこの開発製品を装着した。インプラントに使われる電極は髪の毛の約100分の1程度の太さであり、柔軟性の高い薄いフィルムの端に並べて設置される。電極群は大脳皮質運動野に5~8nmの深さで差し込まれコイン大の無線装置に接続される。装着の際には、頭蓋骨を5nmの薄さに削り、そこにインプラントを設置、電極だけを差し込む形にすることで手術による脳への負担を大幅に軽減している。この被験者は術後1週間で回復、退院し、1か月後には意思(思念)によってパソコンのカーソルを操作し、健常者並みにマリオカートなどのゲームができるようになったそうだ。
インプラントは術後、安定して作動、感染は起こらず、電極の機能消失もなかったことから、同社製品は6月、中国科学院脳科学智能技術卓越イノベーションセンターの研究員、復旦大学付属華山医院神経外科チームによって、臨床試験段階に進んだ。これはイーロン・マスク氏などが創業した「Neuralink」などによる臨床試験に続き、世界で2件目となった。
